製品ナビは、工業製品からエレクトロニクス、IT製品まで、探している製品が見つかります
製品ナビ×IO-Link特集
2023年7月12日 UPDATE

IO-Link
現場のセンサ、アクチュエータ までデジタル通信を実現

IO-Linkコミュニティ ジャパン
若命 敬一
はじめに

インダストリー4.0の提唱は製造現場へのIoTの導入とデジタルトランスフォーメーションを促 進しスマートファクトリーの実現を目標とした新技術の開発、採用を加速させている。インダス トリー4.0では”相互運用”と”データ活用”が構成要素である。IO-Linkはこれら構成要素を実 現するために導入可能なデジタル通信技術である。

1.IO-Linkの特長と技術概要

IO-LinkはIEC61131-9準拠のセンサ、アクチュエータ用デジタル通信技術である。産業用 イーサーネット、フィールドバス上のリモートIOターミナルから接続されるセンサ、アクチュ エータのネットワーク接続が可能である。接続機器情報と生成データの見える化を新規、既存 設備に対し迅速に実現できる。
IO-Linkでは多くの場合産業用イーサーネット、フィールドバス上のリモートIOターミナルがマ スタとなりリモートIOターミナルから接続されるセンサ、アクチュエータがデバイスとなる。リ モートIOターミナルの各ポートのマスタと接続されるデバイス間の1対1通信である。 既存の3芯または5芯のセンサケーブルを使用できコネクタは主にM12防水コネクタを使用 する。配線、コンポーネンツで既存のデジタルIOシステムを踏襲できる構成である。

1-1 簡単な配線

マスタとデバイス間のケーブルの配線は、一般的にセンサを接続する場合は4番ピンを通信に 1番と3番ピンを電源に使用する。通信の4番ピンはIO-Link通信(IO-Linkモード)の他従来の 接点入力モードとしても使用できる。2番と5番ピンは未使用または5番ピンにアナログ信号 を接続できる。この配線をClass Aと定義している。モーターコントローラのような追加電源 が必要な機器を接続する場合は追加絶縁電源用に2番ピンと5番ピンを使用できる。この配線 をClass Bと定義している。

IO-link通信ケーブルのアサイン

1-2 通信特性

通信特性は20メートルの伝送距離で最大32バイトのプロセスデータを送受信できる。 ボーレートはC O M 1からC O M 3まで定義されておりC O M 1で4 . 8 k b p s 、C O M 2で 38.4kbps、COM3で230kbpsが選択可能である。2バイト程度のデータ通信の場合、 COM2で約2msecでデータ交換ができる。IO-Linkデバイスは定義された1つのボーレート を選択する。IO-LinkマスタはIO-Linkデバイスの設定ボーレートを自動認識する。

1-3 簡単な設定

送受信されるデータタイプは最大32バイトのプロセスデータの他、接続デバイスのパラメー タとなるデバイスデータ、入力データの有効、無効を判定するステータスデータ、デバイス故 障、断線等を通知するイベントデータが定義されている。 IO-Linkのデータサイズ、データタイプの選択と設定は電子記述ファイルと主にPCから操作 するエンジニアリングツールから実行する。IO-Linkの導入は既存装置の大幅な変更が不要で ある。また設定、操作も最小限で導入が可能である。

2.IO-Link導入のメリット
2-1 最小限の導入コスト

IO-Linkの通信はマイコンとトランシーバで構成される搭載機器のプラットフォーム上に通信 プロトコルのミドルウエアを実装することで実現できる。ミドルウエアには搭載機器のベン ダー、デバイスIDが組込まれIO-Linkマスタとデバイスのスタートアップ時にこれらID情報も 通信されるので接続機器、ベンダー名が常に識別可能である。
機器メーカーでのIO-Link対応機器の開発は低価格のマイコンとミドルウエアで実現できる。 コネクタとケーブルも既存のものが使用できるので製品価格への影響も最小限に抑えられ る。ネットワーク対応時に直面することが多い導入コストの問題も解決できる。

2-2 センサ、アクチュエータの見える化

IO-Linkの導入により製造現場に設置、稼動している膨大な数のセンサ、アクチュエータの機 器情報と生成データを識別データとして収集、活用できる。そのほかステータスデータでの通 信異常の判定、イベントデータでの機器の故障通知にも対応しているので不具合時の迅速な 対応も実現できる。
IO-Link接続デバイスはエンジニアリングツールによるネットワーク設定が必要である。多くの 場合接続デバイスのID情報は機器毎にベンダーが用意する電子記述ファイルであるIODD ファイルに含まれる。マスタは接続デバイスのIODDファイルをエンジニアリングツールに登 録しデータサイズ、タイプを設定し通信を開始する。
IO-LinkではIODDファイルのデータベースとして、インターネット上にIODDファインダを用 意している。世界中のIO-LinkデバイスのIODDファイルが登録されており、ユーザはエンジニ アリングツールからアクセスし必要なIODDファイルをダウンロードして設定ができる。IOLink のオープンな共通インターフェースは異なるベンダーのデバイス接続と交換を簡単なエ ンジニアリング作業で実現する。

2-3 上位ネットワークとの統合

IO-Linkは世界中の現場で採用され稼動しているCC-Link IE, EtherCAT, EtherNet/IP、PROFINET等の主要な産業用 イーサーネットの下位の位置付である。産業用イーサーネット上のリモートIOターミナルの各入出力ポートに共通インター フェースとしてIO-Linkマスタ機能を搭載し接続されるセンサ、アクチュエータにIO-Linkデバイス機能を搭載する。
リモートIOターミナルは産業用イーサーネットとIO-Link通信とのゲートウエイとして機能する。IO-Linkの採用によりリモー トIOターミナルから先のセンサ、アクチュエータの見える化が可能である。膨大なセンシングデータを産業用イーサーネット 経由で上位、クラウドレベルまで識別可能なデータとして送信できる。

 

産業用イーサネットとIO-link

3.IO-Linkの今後の拡張

IO-Linkはデジタルトランスフォーメーションの促進とともに設置ノードが増加しており2021年末は累積2730万ノードとな り前年度末の2100万ノードから630万ノードの増加である。前年が500万ノードの増加であるので、10%以上の増加と なっている。IO-Link Communityでは今後年間40%の増加を予想している。

IO-link累積出荷ノード数の推移

IO-Linkは機能拡張も続き安全通信IO-Link Safetyと無線通信IO-Link Wirelessの対応機器も2022年中にリリースされる予定である。

3-1 IO-Link Safety

IO-Linkに機能安全IEC61784を付加した技術である。IO-Link対応機器のプラットフォーム上にIO-Link Safetyのミドルウ エアを統合する。産業用イーサーネットの機能安全対応で採用されているブラックチャンネル方式を採用しておりマスタ、デバ イス間の通信はIO-Linkの通信技術を使う。製造現場には安全センサ、ライトカーテン、緊急停止ボタン等、多くの安全機器が 設置されているが、これら安全機器は機種毎、ベンダー毎に異なる安全規格で接続されるので安全コントローラ、安全IOターミ ナルは接続安全機器毎にユニット追加が必要である。安全IOターミナル、安全機器がIO-Link Safetyに対応すれば安全機器 間での共通プロトコルとなる。機器ベンダーは複数の安全通信規格の対応が不要となり安全コントローラ、安全IOターミナル のユニットも削減が可能である。
IO-Linkと同様にIO-Link Safetyマスタは産業用イーサーネットの機能安全ネットワークとのゲートウエイとなるので製造現 場の安全機器の見える化と安全データの活用を実現する。

3-2 IO-Link Wireless

IO-LinkにIEEE802.5準拠エアーインターフェースを付加した無線技術である。製造現場の監視、可動デバイス等、無線接続 が要求される機器のIO-Link通信を実現する。
エラーパケットレート(PER)10e-9での安定性に周波数/時間分割メディアアクセススキーム(F/TDMA)を採用し2.45GHz の帯域で5msecのデバイス間通信が可能である。IO-Link Wirelessマスタのエアーインターフェースでは1つのセルで3つ のマスタに対応する。各マスタは5つのトラックで各8台のIO-Link Wirelessデバイスとの接続が可能である。1つのIO-Link Wirelessマスタは40台までのIO-Link Wirelessデバイスとの通信が可能である。有線のIO-Linkとの統合も実現する。今 後増加してくるワイヤレス機器をIO-Link通信で見える化を実現する。
IO-LinkはすでにIEC規格となっているが、新しくIO-Link Safety、IO-Link WirelessのIEC規格化の討議が始まっている。 それぞれ機能安全拡張(IEC 61139-2)と無線拡張(IEC 61139-3)規格化のためにIO-Link コミュニティ ジャパンは JEMINAのIEC/TC65国内委員会と連携を開始している。

4.IO-Link コミュニティ ジャパン

IO-Linkの日本国内での普及と日本のベンダーのIO-Link開発の促進とサポートを目的に2017年に設立し現在は36社のメンバーで活動をしている。主に定期セミナーと展示会の出展でIO-Linkとメンバー会社のIO-Link対応製品、開発ソリューション を紹介している。

■定期セミナー
IO-Link紹介、開発セミナー:紹介セミナーではIO-Linkの概要、 最新技術、メンバー会社のIO-Link対応製品、アプリケーション 事例の紹介を行う。開発セミナーではIO-Linkの開発手段、認 証、メンバー会社の開発ソリューションを行う。2020年からは オンライン開催であったが2022年よりリアルセミナーで年2 回程度の開催を予定している。

■IO-Link体験セミナー
早稲田大学理工学部施設での定員制セミナーである。IO-Link 対応実機を使用し実際に設定し通信確認ができる。開催日の午 前中に行う。

■IO-Link技術セミナー
IO-Linkの通信プロトコル説明を体験セミナー開催日の午後に 行う。

■展示会
IIFES、スマート工場展等に出展しIO-Linkの技術、概要とメン バー会社のIO-Link対応製品を紹介し動作デモ機を展示する。 IO-Link Community(ドイツ)とも定期的なミーティングで連携 し最新情報を確認している。
会員は常時募集中である

IO-Linkはインダストリー4.0の実現に貢献し迅速に、そして低 価格で導入可能な通信技術であり今後も機能拡張が続く。IOLink コミュニティ ジャパンはメンバー会社と連携し日本国内で のIO-Link採用と開発支援をしてゆく所存である。

連絡先
IO-Linkコミュニティ ジャパン
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-1-6 ウエストワールドビル4F 日本プロフィバス協会内
電話/Fax:03-6450-3739
E-mail: info@io-link.jp URL: www.io-link.jp


IO-Link対応製品のご紹介
エンドレスハウザー ジャパン(株)
IO-Link対応 電磁流量計 Picomagは、導電性液体を使用するさまざまなアプリケーションに使用でき、経済的かつ省スペース設計のIO-Link対応電磁流量計...

IO-Link開発ソリューション
MKY(同)
IOターミナル、センサに組込んで実装できIO-Link対応をわずかなリソースと時間で実現するソリューションであるTMG社のソフトスタックを提供。IO-Linkは、IOターミナルと接続されるセンサなどの...

IO-Link対応製品のご紹介
ヒルシャー・ジャパン(株)
IIoT&産業用通信SoC netX 90とスマートIO-Linkトランシーバ netIOLのハードウェアセット上にIO-Linkと産業用ネットワーク間のマッピングを既に行ったソフトウェアをバンドル提供。...