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製品ナビ×EtherCAT特集
2024年1月16日 UPDATE

EtherCAT 20周年!
~これからも続くEtherCATの進化~

EtherCAT Technology Group 日本オフィス
Representative/Technologist 小幡正規
はじめに

今年度はEtherCATの発表とEtherCAT Technology Group設立から20年という記念すべき年です。EtherCATは当初の基本プロトコル仕様には一切の変化を加えず、後方互換性を完全に維持したまま、多数の拡張をオプションとして追加することで進化してきました。2017年にTSN対応プロファイルを産業イーサネットとして最も早く公表し、まもなく1Gbpsや10Gbpsに対応したEtherCAT G/G10の正式リリースが予定されています。現在でもなおEtherCATは最高速かつ高効率の産業用イーサネットです。ここでは、EtherCATのこれまでのマイルストーンと現在の動向を紹介するとともに、EtherCATのノード数を公表します。

EtherCAT: マイルストーン

EtherCATはこの20年の間に絶え間なく進化を続けてきました。 EtherCATは独ベッコフオートメーションが開発したイーサネットをベースとしたフィールドバスです。産業用イーサネットに分類されるネットワークであり、物理層は完全にIEEE 802.3に準拠しています。ただし、上位のネットワーク階層にTCP/IPなど一般的にイーサネット上で使用するプロトコルを使用しません。イーサネットベースのネットワークで使用されるスイッチングハブはストア&フォワードの遅延やバッファリングによるジッタがリアルタイム性能を低下させます。産業用のデバイスがピア・ツー・ピアでイーサネットフレームによってデータ交換を行うとき、最小フレームサイズやプロトコルヘッダがデータサイズに比べて大きすぎることがデータ帯域の使用効率を低下させるという問題があります。EtherCATは独自の上位階層のプロトコルを定義しているので、このような問題は全て解決されています。EtherCATは専用通信チップでフレームを通過させながらデータを入出力し、フレームルーティングをすることが特徴です。また、リング状の経路にSubデバイスが並び、1つのフレームが全Subデバイスを通過するので、この1つのフレームで全てのデータ交換を行えます。EtherCATは以下のような産業イーサネットの問題を改善します。

  • ■ソフトウェアによるフレーム処理をなくし、低遅延・低ジッタを実現
  • ■送受信データを処理するだけなのでソフトウェアスタックが単純かつ軽量
  • ■スイッチングハブが不要のため、バッファリングによる不規則な遅延がない
  • ■デバイスに個別フレームを送る必要がなく、1つのフレームで全デバイスとの通信が 完了し、フレームヘッダー・トレーラーやパディングなどの無駄な通信部分を最小化

EtherCATは2003年4月のハノーバーメッセにおいて発表され、EtherCATの標準化と普及を目的とする組織として同年の11月EtherCAT Technology Group(ETG)が設立されました。当初の設立メンバーはわずか33社で、ほぼ独および欧州のデバイスメーカーや通信技術メーカーですが、設立当時からすでに先見性のあるユーザーがEtherCATの性能に興味を示しETGの活動に参画していました。現在のメンバー数は7460社(2023年12月)であり、近年の1年の新規メンバー増加数はコンスタントに400社以上です。欧州発の技術のためまず欧州から普及が始まりましたが、今ではアジアが総メンバー数の42%を占めており、欧州に匹敵する割合になっています。アジア内のメンバー数は中国、日本、韓国の順であり、この3カ国がアジアにおけるEtherCAT普及を牽引しています。日本のメンバー数も年に約50社のペースで拡大を続け、まもなく800社に到達します。

グラフ

グラフ

2005年には標準EtherCAT通信をブラックチャネルとして利用する方式で、機能安全プロトコルSafety over EtherCAT(FSoE)が公表されました。FSoEデバイスは標準EtherCATデバイスと混在できます。FSoEプロトコルはアプリケーション層の安全データコンテナと安全状態を表すステートマシンとして定義され、EtherCAT以外の通信プロトコルを使用した安全データの交換もサポートしています。このため、装置内だけでなく、装置間で安全データコンテナを交換して連携させることも可能です。 EtherCAT Mainデバイスは標準のイーサネットポートを使用し、ソフトウェアで機能実装を行いますが、SubデバイスはEtherCAT Subデバイスコントローラー(ESC)という通信用のハードウェアが必要です。最初のESCはFPGA IP coreで提供されましたが、仕様が確定した後、最初のASICを2006年にリリースしています。FPGAと比べて低コストでフットプリントの小さいASIC版ESCの登場によってEtherCATデバイスの開発が加速していきます。その後、大手チップメーカーからESC機能とマイクロプロセッサーを統合したSoCなどが続々とリリースされました。 EtherCATの国際規格化は2007年です。IEC 61158のType 12がEtherCATであり、これはETG.1000 EtherCAT仕様書と同一のドキュメントです。IEC 61800-7は電気を動力とするモーターの規格で、EtherCATのCiA402やSERCOSベースのデバイスプロファイルが定義されています。IEC 61784-2 CPF12は通信プロファイルの規格であり、通信メディアやコネクタなどのネットワーク敷設などに関する仕様が定義されています。

歴史

2009年には対応デバイスのコンフォーマンステスト仕様が整備されました。同年春に独、夏に日本にEtherCATテストセンター(ETC)を開設しています。さらには北米、中国でもオープンし、現在は世界の4箇所でテストサービスを提供しています。2015年には機能安全仕様であるSafety over EtherCAT(FSoE)の仕様適合を行うFSoEテストセンターも整備され、安全デバイス認証の支援が始まりました。 また、EtherCATは2012年に韓国、2014年に中国の国家規格になっています。これはアジアにおけるEtherCATの普及に大きく貢献しています。

資格

2016年のEtherCAT Pおよび2019年のEtherCAT Gは技術的なトピックになります。 EtherCAT Pは100BASE-TXの4線の通信ラインに2組のDC24V 3Aの電源供給機能をカップリングさせる技術です。従来のPoEとは異なり、産業用途で一般的なDC24Vに対応していること、EtherCAT Pのトポロジー内で電源を後続デバイスに供給できることが特徴です。専用コネクタや2色に色分けされたケーブルを使用して誤接続を防止します。制御盤外で使用する耐環境デバイスを接続するときに省配線化を実現できます。 EtherCAT Gは、現在開発中の技術です。EtherCAT G対応デバイスは、物理層とESCをGbイーサネット対応するだけです。ただし、単純に100MbをGb化してもデータ転送レートは向上しますが伝送遅延は変わらないため大きな性能改善は望めません。また、Gbイーサネットは100Mbに比べてノイズ耐性が低くなります。そこで、EtherCAT Gの活用シナリオとしては主に2つを考えています。1つは、高速サンプリング計測、ビジョンデータや高機能モーションなど100Mbで帯域が不足するような大容量データを扱うデバイスのEtherCAT G化です。もう1つは、多数のデバイスからなる巨大EtherCATネットワークのEtherCAT Gによる幹線とネットワークのセグメント化です。この場合、従来のデバイスをそのまま活用します。数~数十バイト程度の一般的なデバイスはEtherCAT G化する必要はありません。幹線とセグメント間のルーティングデバイスとしてEtherCATブランチコントローラー(EBC)という新しいデバイスが定義される予定です。EBCは幹線から特定のセグメント宛てにフレームをルーティングします。標準EtherCATネットワークでフレームが全てのデバイスを通過するのに対し、セグメント宛てのフレームは幹線から指定されたセグメントだけを通過し、直ちにMainデバイスに戻ります。これにより、フレームの伝送遅延を大幅に削減できます。
ETGは世界のエリアごとに2005年からPlug Festを毎年開催しています。これは、Mainデバイス、Subデバイスおよび設定ツールなどのメーカーが開発中の製品をもちより、相互の接続テストを行うことで実装の改善や技術アドバイスを行うイベントです。EtherCATの相互運用性の向上、開発メーカーの製品改善のサポートが目的です。コロナパンデミック中は開催を休止しましたが、Plug Festを代替するオンラインイベントとしてInteroperability Testing Weekを実施し、開発のヒントやノウハウを共有するセミナーや個別相談を行いました。本イベントは開発上の課題をお持ちの技術者に大変好評であり、現在はInternational Technology Weekと名称を変更して継続しています。日本エリアでは日本語字幕付きでオンラインセミナーを提供しているのでどなたでもお気軽にご参加いただけます。 このように、EtherCATはさらなる性能や利便性向上のための機能拡張やメンバーサポートを今後も活発に行なっていきます。

EtherCAT累積ノード数の推定

ETGは、これまでEtherCATのノード数を公表していませんでした。今回初めて公表できるようになったのには理由があります。ETGとしてはノード数という定量的な数値を発表するにあたり正確性が重要であると考えています。発表するに際し、算出の根拠を示す必要があると考えていました。前述のようにEtherCATは当初FPGAベースのESCで始まり、この実装によるデバイスが多数ありましたが、ライセンスの仕組みによりその数値の把握は困難でした。もちろん、デバイスメーカーは出荷数をETGに報告するような義務はありません。現在はASICベースが主流となっているため、チップ出荷数を把握できます。この推定ではFPGAベースのデバイスは控えめに全体の10%未満であると仮定しています。ASICの出荷数に市場在庫も含まれるため厳密にはノード数ではありませんが、一定の市場在庫で推移するので、多少のタイムラグでそのノード数に達するのは間違いありません。2022年末の統計ではEtherCATノード数は5910万ノードです。

ノード数

なお、この推定にはモジュラータイプのEtherCAT I/Oはカウントされていません。例えば、以下のような構成では、スライスI/O単位がEtherCATデバイスですが、これを1ノードとカウントしています。モジュラーI/Oで使用するESCは型番が異なり、ノード数カウントには含まれていません。

ノード数

お知らせ

ETGは2024年にセミナーや展示会出展を多数開催いたします。開催が確定した採用セミナーや開発サポートセミナーはETG Webサイトで告知します。定期的にETGウェブサイトのイベントページをご覧ください。

イベント

EtherCAT Technology Group (ETG)について

ETGはEtherCATの技術仕様の管理と拡張、セミナーや展示会などのプロモーションを行っています。2023年12月の時点で、ワールドワイドのメンバー数は7460社からなる世界最大のフィールドバス団体です。日本国内では約800社が参加しています。

問い合わせ先
EtherCAT Technology Group日本オフィス
〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1-1-8 日石横浜ビル18F
TEL : 045-650-1610
FAX : 045-650-1613
お問い合わせ : info.jp@ethercat.org
技術サポート : support.jp@ethercat.org
ウェブサイト : www.ethercat.org/jp.htm
Twitter :@EtherCAT_Japan


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