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製品ナビ×EtherCAT特集
2021年12月8日 UPDATE

EtherCATの機能安全プロトコル
Safety over EtherCATとは

EtherCAT Technology Group 日本オフィス
Representative/Technologist 小幡正規
ますます採用が進むEtherCATの魅力

EtherCATは最高速かつハードリアルタイムな産業用イーサネットとして、ますます採用が拡大し続けています。2021年11月1日時点の
メンバー数は6365社となり、日本のメンバー数も700社を超えました。
EtherCATの魅力は、高速性とリアルタイム性、高精度時刻同期機能、センサー・アクチュエーターをはじめI/Oとモーションさらにはセーフティデバイスの混在など性能的な側面だけではありません。ノードアドレスやスレーブの設定データはEtherCAT設定ツールおよび EtherCATマスターが集中管理することによって、エンドユーザーの設定作業を極限まで簡略化し、故障時のデバイス交換も電源とネットワーク接続だけで行えるようなユーザービリティを提供しています。スレーブに内蔵されているEtherCATスレーブコントローラー(ESC)は EtherCATネットワークの相互接続性を保証し、高度な診断機能を支援します。EtherCATマスターはESC内の状態データをモニタリングしてネットワークの障害箇所を特定でき、迅速な障害復旧を行えます。
つまり、EtherCATはフィールドバスとして最も高性能、かつ使いやすい産業用イーサネットであるといえます。

EtherCATの動作のしくみ

EtherCATの高速性は、ESCによるフレームルーティングとオンザフライ処理、論理アドレスによるプロセスデータのブロック化によってもたらされます(図2に表示の二次元バーコードでYouTubeのムービーを閲覧できます)。ESCによって通信経路は図2のようにすべてのスレーブを通過するリング状となります。マスターは各スレーブのプロセスデータを論理アドレス空間に効率よく割付けし、出力データや入力データのメモリブロックを構成します。マスターは各スレーブにそれぞれの入出力データを割り付けた論理アドレスを通知します。マスターはメモリブロックを一定の周期で送信し、各スレーブは自身のデータが割り付けられた論理アドレスのデータにアクセスします。一般的な産業用イーサネットで行われるマスターとスレーブ間のピア・ツー・ピア通信の場合、マスターと1台のスレーブ間で1個の通信フレームを使用しますが、EtherCATは1個の通信フレームで全てのスレーブのデータを送信できるので通信フレームのヘッダやパッドバイトのようなオーバーヘッドを最小限にし、非常に効率よく通信帯域を使用します。
EtherCATのもう一つの特徴としてディストリビュートクロック(DC)という時刻同期機能があります。時刻同期はマスターとESCに内蔵されたDCユニットが行います。ネットワークのリング状の通信経路を利用して基準時計を配信するとともに、伝搬遅延の補正を行い、基準時計の時刻を周期配信すること各スレーブの時計のゆらぎによる誤差を補正します。これによりスレーブ間の時刻が100nsより十分高精度に同期します。マスターはESCに同期割り込み生成開始時刻とその周期を通知します。ESCは同期した時刻を利用して、先のようにマスターが設定した時刻に同期割り込みを生成し、スレーブアプリケーションを処理するマイコンはこの同期割り込み受信をトリガに同期制御を行います。この時刻情報は同期だけでなく、デジタル入力信号の立ち上がり・立ち下がり時間のタイムスタンプや、通信周期を分周したオーバーサンプリングにも活用され、通信サイクルタイムに依存しない高時間精度の制御を行うことが可能になっています。

機能安全プロトコル Safety over EtherCAT

EtherCATの機能安全プロトコルであるSafety over EtherCATは略称がFSoEとなっています。これは歴史的なもので、SoEがSERCOSベースのドライブプロファイルで使用されていたためであり、Fail SafeあるいはFunctional Safetyの意味を込めた命名となっているからです。
FSoEデバイスはEtherCATスレーブとして、EtherCATネットワーク内に設置します。FSoE専用のネットワークを新たに敷設する必要はありません。ネットワーク内に安全制御を行うFSoEマスター+安全ロジックと、安全I/Oおよび安全ドライブなどのFSoEスレーブとが、周期プロセスデータ通信を利用したスレーブ間通信機能により安全データを交換します。
安全プロトコルを非安全なフィールドバスを経由して交換する方式をブラックチャネルアプローチといい、安全プロトコル側で、安全データの適時性、整合性などのチェックを行います。
スレーブ間通信は、EtherCATマスターが交換する安全データの転送を行い、この部分も含めてブラックチャネルとみなされます。FSoEデバイスを使用するときには、スレーブ間通信をサポートするEtherCATマスターを使用してください。また、FSoEはアプリケーション層で完結するプロトコルなので、安全データを伝達するメディアやフィールドバスプロトコルはブラックチャネルでありEtherCATに依存せず、他のフィールドバス通信などを経由することも可能です。例えば、装置内の安全データをEtherCATマスターから他のネットワークプロトコルを介して、別の装置のFSoEシステムと容易に連携させることが可能です。
FSoEデバイスには認証試験が義務付けられています。ETGの認定したEtherCATテストセンターによる公式EtherCATコンフォーマンステスト、FSoEテストセンターによるFSoEコンフォーマンステストに合格した製品が、安全認証のプロセスを経て販売されています。これらのデバイスには、Safety over EtherCATロゴを使用できます。FSoEデバイスに関心をお持ちの方はETG Webサイトの製品ガイドページをご覧ください(大分類に「セーフティシステム」を選択)。

FSoEは IEC 61784-3:2021の拡張要件に対応

IEC 61784-3は主にフィールドバスで使用する安全プロトコルのメッセージ交換の規格です。FSoEプロトコルは2010年にFSCP 12(Functional Safety Communication Protocol)としてIEC-61748-3-12:2010ですでに国際的に標準化されており、現在もオリジナルの1.0版が有効です。この規格の新エディションとして2021年2月にIEC 61784-3: 2021第4版がリリースされています。
この更新された新しい規格では、基本的に2つの規範的な要求事項が追加されています。第一に、安全な論理接続における適時性、真正性、データ整合性の残留エラー確率を推定するモデルが導入されました。第二に、この規格では、安全プロトコルにおける明示的および暗黙的なメカニズムの保護を要求しています。この場合、暗黙のメカニズムは保護に必要なすべてのデータを送信するのではなく、送信者と受信者の両方で既知のデータを使用して完全なCRC署名を計算します。
この新しい要件が既存の安全プロトコルに与える影響は大きく、多くのフィールドバス用安全プロトコルは要件を満たすための変更を行わなければならない可能性があり、既存製品と新規格に対応した製品の互換性問題が懸念されています。このような状況の中、TUV SUDによるレビューによってFSoEプロトコルがIEC 61784-3:2021 第4版の新しい規格要件に対し、機能変更することなく適合していることが確認されました。したがって、FSoEは新規格のもとでも変更なしに安全度水準(SIL) 3までの安全アプリケーションに対する実装に対応しています。
FSoEはリリースされて以来、互換性を維持した拡張のみが行われ、基本プロトコルには変更が行われていません。また、IEC 61784-3:2021の要件も当初のプロトコルのままで対応しています。仕様リリース時のFSoEデバイスも最新および今後リリースされるFSoEデバイスも共存が可能です。EtherCATの基本プロトコルには変更を加えず、後方互換性を重視した機能拡張のみ行うというコンセプトにより、従来資産を継承しつつ新機能に対応し、柔軟な拡張が保証されています。

ETGの技術紹介・解説資料はWebサイトで一般公開されています。仕様書などの技術資料はサイト内メンバーエリアにあり、ETGメンバーは仕様書や開発情報を無償でダウンロードできます。
メンバーを対象とした技術セミナーも数多く用意しています。ETGのメンバーシップにご興味をお持ちの方はETG日本オフィスまでお問い合わせください。

イベント情報

ETGでは一般の方を対象にしたセミナーやメンバー向けイベント開催を予定しています。開催日および参加登録については近日中にETGウェブサイトのイベントページで告知いたします。

ETGはIIFESに出展します

ETGブース(西ホール No1-08)では、日本で入手・サポート可能なEtherCAT対応製品を一堂にご紹介します。今回は20社を超えるデ バイスメーカー様から最新製品が展示されますのでぜひご覧ください。また、オンライン出展者セミナーでは、EtherCATの基本技術を 国内における多様な採用事例を交えて解説します。この機会にETG/EtherCATの最新情報を入手してください。

問い合わせ先
EtherCAT Technology Group日本オフィス
〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1-1-8 日石横浜ビル18F
TEL : 045-650-1610
FAX : 045-650-1613
お問い合わせ : info.jp@ethercat.org
技術サポート : support.jp@ethercat.org
ウェブサイト : www.ethercat.org/jp.htm
EtherCATメンバーリンク:https://www.ethercat.org/jp/members.php


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