今年もEtherCATの累計ノード数を発表!
~採用がさらに加速するEtherCAT~
日本オフィス代表 小幡正規
EtherCATは実績のある、技術仕様の安定した産業イーサネットとして安心して長く使える技術です。EtherCATは基本仕様に変更を加えず、互換性を考慮した機能拡張をすることで発展してきました。もちろん、EtherCATの一番の特徴は、高速性とハードリアルタイム性です。MainデバイスがS u bデバイスセグメントに送信するフレームを集約し、100Mbit/sの通信帯域を周期プロセスデータに効率的に使用できます。また、全世界で広く普及し低コストで入手可能であることはいうまでもありません。
2024年5月の時点で7690社がETGのメンバーシップを有し、全世界 の74カ国をカバーしています。コロナ中は一時的に12ヶ月あたりのメ ンバー増加数がやや低下しましたが、2014年以来、常に400社以上を キープしています。現在の12ヶ月増加数は回復基調にあり500社以上 に戻っています。
EtherCATはドイツ発の技術であり、EtherCAT Technology Group 設立当初は欧州が中心でした。しかし、現在はアジアが欧州に肉薄し、間 もなく逆転するのではないかと思われます。これは、日本、中国、韓国にお ける目覚ましいEtherCATの普及を意味しています。特にこのエリアで は自動車産業、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボットの分野におい てEtherCATは大きく広がりを見せていて、EtherCAT対応のモーション デバイスや半導体製造装置向けデバイス、センサー系デバイスを供給 するメンバーが増加しています。デバイスメーカーだけでなく、デバイス 実装サポートや装置インテグレーション、さらには装置メーカーによる デバイス内製もメンバーシップ取得につながっています。日本では、毎週 のように新メンバーが増え、800社以上のメンバー数になっています。 アジアでは中国についで2番目に大きいEtherCATコミュニティーです。 北米はコンスタントに14%前後を維持しています。これはETGの全世 界の成長と同じ増加率であるということです。この数字は少ないと思わ れることもありますが、メンバー数は1000社以上であり北米で最大の 産業イーサネット組織であることは言うまでもありません。
EtherCAT Gの技術発表はコロナパンデミック前に行われましたが、開発 現場での作業が困難な時期や、部品供給不足の開発体制への影響など の課題がありました。現在は開発は順調であり仕様リリース準備の最後 のフェーズとなっています。EtherCAT Gに多くの期待をもたれています が、誤解されているところもあります。EtherCATは100Mbit/sが メインストリームです。スイッチングハブベースの産業用イーサネットが 1Gbit/sとなったとしてもEtherCATの性能を上回ることはありませ ん。EtherCAT Gの用途は、多数のデバイスによる大容量周期プロセス データに対する帯域飽和と伝送遅延の改善です。EtherCATブランチコントローラー(EBC)を使用し、幹線のGb化とEtherCATセグメント 分割を行います。EtherCATのユーザーは既存デバイスはそのままで 大規模ネットワークの性能向上を行うことが可能になります。ごく一部の 1デバイスで帯域を大きく消費するデバイスだけがEtherCAT G化の対 象です。Subデバイスメーカーは、特にEtherCAT Gへの対応を行う必要 はありません。大規模ネットワークを処理できる高性能なコントローラー を対象とするMainデバイスメーカーはEtherCAT Gに対応し、EBCをサ ポートすることになります。
従来、EtherCAT通信ではSubデバイスの起動時にMainデバイスが周 期プロセスデータを静的に構成し、運転中に追加する機能はありません でした。本機能は、運転を継続しながら、動的に追加の周期プロセスデー タを開始・停止します。この機能には、MainデバイスとSubデバイスの 両方の機能サポートが必要です。特にSubデバイス側はEtherCAT SubDevice Controllerに未使用のSyncManager(通信バッファ管理 機能)とFMMU(アドレス変換機能)があることが要件になります。装置の 開発時に特定のSubデバイスの機能チューニングを行うのに、実際に装 置を運転させながら、周期プロセスデータ通信に対してチューニングに 必要だが運転には不要なパラメータを追加するのに使用できます。 この動的な周期プロセスデータ通信の追加設定や開始が装置の運転に 影響を与えないように、警告通知が新しく追加されています。DPCの設 定は通常のプロセスデータ設定に似ていますが、その設定が不正なとき はエラーではなく、Mainデバイスに警告を通知し、静的な周期プロセス データに関する通常運転を継続するための機能です。
ETGは、2023年に初めて2022年までの累計出荷ノード数を公表しました。この発表が昨年の20周年を記念した一度限りの情報公開なのではと推測していたのですが、今年も最新の累計出荷ノード数がハノーバーメッセ2024プレスリリースで公表されました。ETGとしてはノード数という定量的な数値を発表するにあたり正確性が重要であると考えています。発表するに際し、算出の根拠を示す必要があると考えていました。EtherCATは当初FPGAベースのESCで始まり、この実装によるデバイスが多数ありましたが、ライセンスの仕組みによりその数値の把握は困難でした。もちろん、デバイスメーカーはノード出荷数をETGに報告するような義務はありません。しかし、現在はASICベースが主流となっているため、チップ出荷数を把握できます。現在でも互換性のため、またはFPGAの使用が適したSubデバイスアプリケーションがあるので、FPGA IP CoreによるEtherCATデバイスは存在しますが、この推定ではFPGAベースのデバイスは控えめに全体の10%未満であると仮定しています。ASICの出荷数には市場在庫も含まれるため厳密にはノード数ではありませんが、一定の市場在庫で推移するので、多少のタイムラグでそのノード数に達するのは間違いありません。2023年末の統計ではEtherCATノード数は7710万ノードです。 おそらく、このノード数は数ある産業イーサネットの中でもマーケットシェアとして最上位に位置するものであると思われます。
単年度の出荷ノード数は、半導体不足のために先行発注が行われた経緯などから2021-2023年は大幅な増加となっています。2023年は半導体供給の危機的状況が緩和され、供給体制が正常化しており、過剰な先行発注は一段落しました。また、SEMIによると2023年は世界的に半導体販売が14.5%下落したとの報告もあるなかで、2023年のノード数が2022年とほぼ同等であることは、順調にEtherCATのマーケットが成長し続けていると考えています。
なお、この推定にはモジュラータイプのEtherCAT I/Oはカウントされていません。EtherCAT物理層はイーサネット以外にモジュラーI/O用にLVDSをサポートしています。例えば、以下のような構成では、スライスI/O単位がEtherCATデバイスですが、異なるASICを使用しているのでカウントから除外し、このI/Oブロック全体で1ノードとカウントしています。
ETGは2024年後半にセミナーや展示会出展を多数開催いたします。開催計画中の採用セミナーや開発サポートセミナーはETG Webサイトで告知します。定期的にETGウェブサイトのイベントページをご覧ください。 https://www.ethercat.org/jp/events_2024.htm
ETGはEtherCATの技術仕様の管理と拡張、セミナーや展示会などの プロモーションを行っています。2024年5月の時点で、ワールドワイド のメンバー数は7690社からなる世界最大のフィールドバス団体です。 日本国内では800社以上が参加しています。
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