EtherCATはセキュリティレベル2のCRA要件に対応!
日本オフィス代表 小幡正規
産業ネットワークは、セキュリティ対応のために変化を余儀なくされています。2024年に発効し、2027年12月に完全適用される欧州サイバーレジリエンス法は、デジタル要素を含む産業用デバイスのサイバーセキュリティを義務付けるものであり、基本的にネットワークに繋がる製品はすべて影響を受けます。つまり、産業用イーサネットやフィールドバスに対応する製品は、サイバーセキュリティ対策を考慮しなければならないということです。産業用ネットワーク団体は、その通信仕様においてセキュリティに対する評価を行い、セキュリティの要件を満たさない点があれば、通信プロトコルの拡張などの対応を取る必要があります。一方、欧州CRA法が定めている要件を達成するために定義すべき通信仕様やその方法については、現在のI E C62443などだけでは不十分であり、新しい整合規格の完成が待たれています。しかしながら、完全適用の期限が迫りつつあり、ネットワーク団体はセキュリティ対応を行い、認証機関はそれぞれが基準を設けて認証を始めるという状況です。本記事では、EthercatTechnology Groupの取り組みと現状について紹介いたします。
セキュリティの要件は、デバイスが使用される環境により異なります。一般的な工場は、その会社や協力会社の従業員だけが入場でき、部外者は立ち入りできません。したがってアクセス制限が厳格にされたエリアと考えられ、セキュリティレベル2(SL2)の要件を満たすことが必要になります。一方、搬入出エリアのような社外の人間が立ち入る可能性がある場所やライフラインに関わる緊急性の高いエリアではセキュリティレベル3が要求されます。EtherCATシステムが最もよく使用される工場エリアのSL2について、EtherCATは、現在の技術仕様のままでセキュリティ要件を満足することが認証されています。このアセスメントは2つの認証機関TÜV SÜDとULInternationalによって承認されました。

SL3を満たすには、通信仕様はそのままですがMainデバイスやネットワーク設定ツール側でソフトウェア対策による追加の対応が必要になります。さらに、リスク評価によって暗号化による認証やデータ機密性が必要になる場合があります。ETGは、この追加の要件についてデバイスメーカーをサポートするために、EtherCATセキュリティに対するホワイトペーパーや技術仕様書を準備しています。
EtherCATは、EtherCAT SubDevice Controller(ESC)という専用通信チップがフレーム処理を行います。Subデバイスをコントロールするソフトウェアは、ESCが送受信する通信データバッファにしかアクセスができません。以下のような通信のしくみから認証機関の評価においてEtherCATがセキュリティに対して堅牢であることが判断されました。
■IPアドレス不使用:EtherCAT専用EtherType 0x88A4
■ESCが非EtherCATフレームを破棄
■ネットワークトポロジーとデバイスタイプの確認機能
■不使用EtherCAT通信ポートのブロック
■Device ID確認
■デバイス単位のロストフレーム検出機能
■デバイスのESM状態異常を周期通信レベルで検出
■ネットワーク内デバイス数を周期通信レベルで確認
■デバイスのエラーカウンタによりフレーム破損・リンクロストの場所を特定
2026年2月の時点で8728社がETGのメンバーシップを有し、全世界の79カ国をカバーしています。メンバー増加数は2014年以来、常に400社以上をキープしています。EtherCATはドイツ発の技術であり、EtherCAT Technology Group設立当初は欧州が中心でした。しかし、現在はアジアが欧州全体のメンバー数を逆転しました。これは、日本、中国、韓国における目覚ましいEtherCATの普及を意味しています。

ETGは、2023年に初めて累計出荷ノード数を公表しました。以降、毎年ハノーバーメッセで前年までの出荷ノード数を公表しています。ETGはノード数という定量的な数値を発表するにあたり正確性が重要であると考えています。EtherCATは当初FPGAベースのESCで始まり、ライセンスの仕組みによりその数値の把握は困難でした。現在はASICベースが主流となっているため、チップ出荷数を把握できます。現在でもFPGA IP CoreによるEtherCATデバイスは存在しますが、この推定ではFPGAベースのデバイスは控えめに全体の10%未満であると仮定し、マルチプロトコル対応のチップは市場シェアデータをもとに比例配分しています。また、L V D SによるEtherCAT接続を使用するモジュール型デバイスは、LVDS用通信チップを使用しており、この数は統計には含まれていません。2025年末の統計ではEtherCATノード数は8830万ノードです。公開されているノード数から判断すると、EtherCATは数ある産業イーサネットの中で最大と思われます。もはや、EtherCATは産業用イーサネットの世界標準です。

産業用通信技術の進展は、製造業における装置開発の効率化と性能向上に大きな影響を与えてきました。その中でもE t h e r C A T(Ethernet for Control Automation Technology)は、2003年の登場以来、世界的に急速な普及を遂げ、現在では産業用イーサネットの最も高性能なフィールドバスとして確固たる地位を築いています。EtherCATは実績のある、技術仕様の安定した産業イーサネットとして安心して長く使える技術です。EtherCATは基本仕様に変更を加えず、互換性を考慮した機能拡張をすることで発展してきました。20年以上にわたり1つの基本通信プロトコルバージョンを堅持しつつ、最高性能な産業用イーサネットはEtherCAT以外にはありません。これは、EtherCATが将来を見据えた優れた設計であったことを証明しています。EtherCATの一番の特徴は、高速性とハードリアルタイム性です。MainデバイスがSubデバイスセグメントに送信するフレームを集約し、100Mbit/sの通信帯域を効率的に使用できます。スイッチングハブベースのネットワークに比べ10倍以上の帯域使用効率を実現できるので、Gbイーサベースの技術と比べても、高速、ノイズに対する堅牢性や低消費電力というメリットがあります。また、全世界で広く普及し低コストでEtherCAT製品を入手可能であることはいうまでもありません。
ETGは今後もセミナー開催や展示会出展を多数行う予定です。開催計画中の採用セミナーや開発サポートセミナーはETG Webサイトで告知します。定期的にETGウェブサイトのイベントページをご覧ください。www.ethercat.org → JP → イベント

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