— DEFINITION オシロスコープとは?
オシロスコープは、主に電圧の時間変化を横軸=時間、縦軸=電圧として波形表示する測定器である。テスターやデジタルマルチメータがある時点の電圧・電流・抵抗などを数値で確認する用途に向くのに対し、オシロスコープは信号が時間とともにどのように変化しているかを観測できる。
周期信号だけでなく、単発パルス、起動時の過渡現象、ノイズ、グリッチ、通信信号なども観測対象となる。複数チャンネルを同時に測定できる機種では、入力信号と出力信号、クロックとデータ、複数の電源レールなどの時間関係も確認できる。
— PRINCIPLE オシロスコープの仕組み・測定原理
オシロスコープによる測定では、一般にプローブを介して測定対象の信号を入力する。プローブの入力抵抗や入力容量は測定回路への負荷となり、観測波形にも影響するため、測定対象に応じたプローブを使用する。
現在主流のデジタルオシロスコープでは、プローブから入力されたアナログ信号を入力回路で適切なレベルに調整し、A/Dコンバータで一定間隔ごとにサンプリングする。取得したデータは波形メモリに保存され、トリガ条件に基づいて波形の取得・表示タイミングを制御し、画面上に波形として表示する。
波形を適切に捉えるには、測定対象の周波数成分に見合った帯域幅とサンプリングレートが必要になる。長時間の変化を記録したい場合はメモリ長、まれに発生する異常を探す場合は波形更新速度やトリガ機能が重要になる。
— MEASUREMENT オシロスコープで確認できる主な項目
オシロスコープでは、電圧波形の観測に加え、振幅や周期、周波数、信号の立ち上がり時間など、さまざまな項目を測定できる。また、複数信号間のタイミングや、ノイズ・異常波形の確認にも使用される。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 電圧・振幅 | 最大値、最小値、ピーク・ツー・ピーク値、実効値など |
| 時間 | 周期、パルス幅、遅延時間など |
| 周波数 | 周期信号の周波数や周波数変動 |
| 立ち上がり・立ち下がり | 信号エッジの遷移時間 |
| タイミング | 複数信号間の位相差・遅延・同期関係 |
| ノイズ・異常波形 | リップル、グリッチ、オーバーシュート、リンギングなど |
| 周波数成分 | FFTなどによるスペクトル確認 |
— APPLICATIONS オシロスコープの用途
オシロスコープは、電子回路の開発評価から電源・モータの制御、通信の確認、設備の保守まで、電気信号の時間変化を確認するさまざまな場面で使用される。測定する信号や確認したい内容によって必要な仕様が異なるため、主な用途ごとに測定内容と使用例を示す。
電子回路・基板の開発評価
マイコン、FPGA、センサ回路、アナログ回路などの開発では、クロック、データ、制御信号、電源波形などを観測し、設計どおりの信号が得られているかを確認する。起動時の過渡現象やタイミングずれ、ノイズなど、数値測定だけでは把握しにくい現象の確認にも使用される。
・使用例:マイコン基板の信号確認、電源起動波形の評価、ノイズの調査
電源・パワーエレクトロニクス
スイッチング電源、インバータ、コンバータなどでは、スイッチング波形、リップル、過渡応答、ゲート信号などを測定する。高電圧やフローティング電位を扱う場合は、差動プローブや絶縁入力型オシロスコープなど、測定対象に適した入力方法が必要となる。
・使用例:スイッチング波形の確認、出力リップルの測定、過渡応答の評価
モータ・インバータ制御
モータ駆動回路では、PWM信号、ゲート駆動信号、電流波形、エンコーダ信号などの確認に使用される。複数信号を同時に観測することで、制御信号と実際の動作の時間関係を評価できる。
・使用例:PWM信号の確認、ゲート駆動波形の評価、エンコーダ信号の確認
通信・デジタルインターフェース
I²C、SPI、UART、CAN、CAN FD、LINなどのシリアル通信、およびEthernetやUSBなどのインターフェースでは、電気的な波形品質とプロトコル上のデータ内容を確認する。対応機種では、シリアルバスのトリガやデコード機能を利用して特定データを含む通信を抽出できる。
・使用例:I²C・SPI・CANの通信確認、信号品質の評価、特定データを含む通信の抽出
車載・組み込み機器
ECU、センサ、アクチュエータ、通信バス、電源系などの評価に使用される。複数チャンネルや長時間記録が必要な場合は、チャンネル数、メモリ長、ロギング機能などが選定条件となる。
・使用例:ECU電源系の評価、CAN・LINなど車載ネットワークの確認、センサ出力の長時間記録
設備保守・トラブルシューティング
製造設備や電子機器の保守では、正常時と異常時の波形を比較し、瞬間的な電圧変動、ノイズ、信号欠落、タイミング異常などを調査する。持ち運びが必要な現場では、ハンドヘルド型やバッテリ駆動型が利用されることもある。
・使用例:制御信号の異常調査、正常時と異常時の波形比較、電源ノイズの調査
— TYPES & CLASSIFICATIONS オシロスコープの種類
オシロスコープは、信号の表示・取得原理、デジタル式の解析機能、本体形状・接続形態などによって分類される。分類軸は互いに独立しているとは限らず、複数の特徴を併せ持つ製品もある。このほか、パワーエレクトロニクスなどで重要となる絶縁入力型については、上記とは別に示す。
動作原理による分類
アナログオシロスコープ
入力信号に応じて電子ビームを偏向させ、ブラウン管上に波形を直接表示する方式である。従来型では波形のデジタル保存や自動解析が難しく、単発現象の記録には向かない。
デジタルオシロスコープ
入力信号をA/Dコンバータでデジタルデータに変換し、メモリへ記録して波形を表示する方式である。単発現象の捕捉や波形保存、自動測定、演算などに対応し、現在主流となっている。
| 種類 | 主な特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| アナログ式 | ブラウン管に波形を直接表示 | 従来型の波形観測 |
| デジタル式 | 波形のデジタル記録・表示 | 回路開発、評価、保守 |
デジタル式の機能・測定方式による分類
デジタルストレージオシロスコープ(DSO)
デジタルオシロスコープの基本的な構成で、一般的な回路評価に広く使用される。取り込んだ波形をメモリに保存して表示し、研究開発から設備保守まで幅広い用途に対応する。DPO、MSO、MDOなどは、この構成をもとに機能を加えたタイプとして分類される。
デジタルフォスファオシロスコープ(DPO)
高速な波形取り込みと発生頻度に応じた輝度・色階調表示を特徴とする。発生頻度の低いグリッチや、時間とともに変化する波形の観測に使用される。
ミックスドシグナルオシロスコープ(MSO)
アナログ入力に加え、複数のデジタル入力を備える。マイコンやFPGAを使用した回路で、アナログ信号とデジタル信号の時間関係を同時に確認する用途に使用される。
ミックスドドメインオシロスコープ(MDO)
時間領域の波形観測と周波数領域の信号解析を連携して行う機能を備える。機種によっては専用のRF入力やスペクトラム解析機能を搭載し、両領域の信号変化を関連付けて確認できる。
デジタルサンプリングオシロスコープ
繰り返し信号を対象に、等価時間サンプリングなどを利用して高速な波形を観測する。高速デジタル通信や光通信の信号品質評価などに使用される。
| 種類 | 主な特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| デジタルストレージオシロスコープ(DSO) | 波形のデジタル記録・表示 | 回路開発、評価、保守 |
| デジタルフォスファオシロスコープ(DPO) | 波形の発生頻度を輝度・色階調で表示 | 低頻度の異常波形の観測 |
| ミックスドシグナルオシロスコープ(MSO) | アナログ入力とデジタル入力を併用 | 組み込み機器、FPGA、デジタル回路 |
| ミックスドドメインオシロスコープ(MDO) | 時間領域と周波数領域の解析を連携 | RF信号の解析、EMIの予備評価 |
| デジタルサンプリングオシロスコープ | 繰り返し高速信号の観測 | 高速通信、光通信 |
本体形状・接続形態による分類
ベンチトップ型(据え置き型)
実験室や開発現場の測定台などに設置して使用する構成である。画面や操作部を本体に備える製品が多く、電子回路の開発・評価や生産設備の検査などに使用される。
ハンドヘルド・ポータブル型
持ち運びを考慮した小型設計で、バッテリ駆動に対応する製品もある。設備保守や現場測定など、据え置き型を設置しにくい環境で使用される。
PC接続型・USBオシロスコープ
PCに接続し、専用ソフトウェアを通じて波形表示や測定操作を行う。一般に本体に専用ディスプレイを持たず、省スペースな測定環境や自動計測システムへの組み込みなどに利用される。
| 種類 | 主な特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ベンチトップ型 | 据え置き型の本体構成 | 研究開発、検査 |
| ハンドヘルド型 | 可搬性を重視した構成 | 設備保守、現場測定 |
| PC接続型 | PCで表示・操作 | 省スペース、自動計測 |
絶縁入力型オシロスコープ
入力が本体(保護接地)から電気的に絶縁されているタイプである。製品によっては、チャンネル間も相互に絶縁されている。本体形状を問わず採用される入力方式であり、上記の分類とは別の観点で選定される。
フローティング電位の信号の測定に使用され、チャンネル間も絶縁された製品では、基準電位の異なる複数の信号を同時に測定できる。パワーエレクトロニクスなどの評価に適しており、絶縁の構成、絶縁耐圧、測定カテゴリは製品ごとに異なるため、仕様の確認が必要である。
— PICK UPS 注目のオシロスコープメーカー
— HOW TO SELECT オシロスコープの選び方
オシロスコープを選ぶ際は、測定する信号の周波数成分や記録したい時間、必要なチャンネル数、安全性、使用するプローブなどを確認する必要がある。測定対象によって重視する仕様が異なるため、使用目的を整理したうえで選定することが重要である。
帯域幅から選ぶ
帯域幅は、オシロスコープがどの程度高い周波数成分まで扱えるかを示す基本仕様である。正弦波では信号周波数が基準になる一方、立ち上がりの速いデジタル信号やパルスには高い周波数成分が含まれる。したがって、単にクロック周波数だけを見るのではなく、再現したい波形の立ち上がりまで考えて帯域幅を決める。
目安として、正弦波を観測する場合は信号周波数の3〜5倍以上の帯域幅を確保する(3倍で振幅誤差が約5%、5倍で約2%)。デジタル信号やパルスでは、信号に含まれる主な周波数成分を「0.35÷立ち上がり時間(10%〜90%)」で概算し、その3〜5倍を目安とする。たとえば立ち上がり時間1nsなら約350MHzの成分を含み、1.05〜1.75GHz程度の帯域幅が目安となる。
サンプリングレートから選ぶ
サンプリングレートは、1秒間に何回信号を取り込むかを表し、S/sで示される。サンプリングレートが不足すると、波形形状を十分に再現できなかったり、エイリアシングによって実際とは異なる波形として見える場合がある。複数チャンネル使用時に最大サンプリングレートが変化する機種もあるため、使用条件での仕様確認が必要である。
実用上は、帯域幅の4〜5倍以上のサンプリングレートがあると波形を再現しやすい。ナイキスト則による「信号の最高周波数の2倍」は理論上の下限であり、実際の波形観測にはより高い値が望ましい。
メモリ長・レコード長から選ぶ
メモリ長は、1回の取り込みで保存できるサンプル数である。高いサンプリングレートを維持したまま長時間を記録したい場合や、長い通信データの中から異常箇所を探したい場合ほど、大きなメモリが必要になる。
取り込み時間は「メモリ長÷サンプリングレート」で求められる。たとえば10Mptsのメモリを1GS/sで使用すると、10msの区間を記録できる。
垂直分解能から選ぶ
垂直分解能は、電圧方向をどれだけ細かく表現できるかを示し、ビット数で表される。一般的なオシロスコープは8bitで、電圧方向を256段階に分けて表示する。大きな直流成分に重なる微小なリップルを観測する場合など、小さな電圧変化を詳しく確認したいときは、12bit以上の高分解能タイプが選択肢となる。
チャンネル数から選ぶ
一般的なオシロスコープには2チャンネルや4チャンネルのアナログ入力がある。電源シーケンス、三相回路、多信号のタイミング確認などでは、より多くの入力が必要になる場合がある。MSOではデジタル入力数も合わせて確認する。
波形更新速度・捕捉性能から選ぶ
グリッチのように発生頻度が低い異常を探す場合は、波形更新速度と取り込み間のデッドタイムが重要になる。単位時間あたりの捕捉回数が多く、観測していない時間が短いほど、短時間の異常を捉えやすい。
トリガ機能から選ぶ
トリガは、波形のどの条件を基準に取り込み・表示するかを決める機能である。基本的なエッジトリガのほか、パルス幅、ラント、タイムアウト、セットアップ/ホールド、シリアルバスなどの条件を指定できる機種がある。調査したい異常現象に対応するトリガがあるか確認する。
入力仕様・安全性から選ぶ
入力インピーダンス、最大入力電圧、入力結合、入力感度などを確認する。電源回路やインバータなど高電圧を測定する場合は、オシロスコープ本体だけでなく、プローブの定格や測定カテゴリ、絶縁方式、接地条件を含めて安全な測定構成を検討する必要がある。
入力インピーダンスは、一般的な受動プローブを使用する場合は1MΩ、50Ωの系の信号を直接測定する場合は50Ωを選択する。50Ω入力は許容入力電圧が低い機種が多いため、定格の確認が必要である。入力結合は、直流成分も含めて観測するDC結合、直流成分を除いて交流成分のみを観測するAC結合、基準電位(0V)の確認に使うGNDから選択する。
解析機能から選ぶ
- 自動測定:周波数、周期、振幅、実効値、立ち上がり時間など
- 演算:加算、減算、乗算、積分、微分など
- FFT:波形に含まれる周波数成分の確認
- シリアルバス解析:I²C、SPI、UART、CAN、CAN FD、LINなど
- マスクテスト:基準範囲から外れる波形の検出
- 電源解析:スイッチング損失、高調波、SOAなど(対応機種)
プローブから選ぶ
プローブは測定対象に応じて選定する。接地基準の一般的な電圧波形には受動プローブ、高速・高インピーダンス信号には低入力容量のアクティブプローブ、接地基準ではない2点間の電圧やフローティング測定には差動プローブ、高電圧の信号には高電圧プローブ、電流波形には電流プローブを使用する。
測定系の帯域は本体とプローブの組み合わせで決まり、プローブの帯域が本体より低いと、プローブ側が制約になる。本体と同等以上の帯域を持つプローブを選ぶのが基本であり、メーカーが指定する組み合わせでは、システムとしての帯域が規定されている場合があるため、仕様を確認する。
あわせて、入力容量、減衰比、最大入力電圧、接地・絶縁条件、本体との適合性を確認する。主な種類と確認項目を次の表に示す。
| プローブの種類 | 特徴・向く測定対象 | 主な確認項目 |
|---|---|---|
| 受動プローブ | 抵抗・コンデンサなどの受動素子で構成される一般的な電圧測定用。10:1減衰型は広く使用され、1:1型より入力容量を抑えやすい。 | 帯域幅、減衰比、入力容量、最大入力電圧 |
| アクティブプローブ | 増幅器などの能動回路を備え、低い入力容量で高速・高インピーダンスの信号を測定できる。 | 帯域幅、入力容量、入力電圧範囲、本体との電源供給・接続互換性 |
| 差動プローブ | 2点間の電位差を測定する。接地基準ではない信号やスイッチング回路の評価に使用される。 | 最大差動電圧、コモンモード電圧、同相除去比(CMRR)、帯域幅 |
| 高電圧プローブ | 接地基準の高電圧信号を所定の比率で減衰させて測定する。フローティング電位の高電圧には、高電圧差動プローブや絶縁入力型オシロスコープを使用する。 | 最大入力電圧、測定カテゴリ、周波数特性、接地条件 |
| 光絶縁プローブ | 光ファイバで信号を絶縁して伝送し、高いコモンモード電圧下の微小な信号を測定できる。SiC・GaNなどのパワー半導体のハイサイドゲート波形の評価に使用される。 | コモンモード電圧範囲、同相除去比、帯域幅、入力電圧範囲 |
| 電流プローブ | 導体に流れる電流を波形として観測する。方式(ホール素子式、ロゴスキーコイル式など)により、対応する直流・交流や周波数帯が異なる。シャント抵抗の両端電圧から求める方法もある。 | 直流・交流の対応、周波数帯域、最大電流、ゼロ調整 |
| ロジックプローブ | MSOなどのデジタル入力に接続し、複数の論理信号の状態やタイミングを観測する。 | 入力電圧、しきい値、チャンネル数 |
— WORKFLOW & IMPLEMENTATION オシロスコープの導入手順
オシロスコープを導入する際は、測定する信号の周波数や電圧、接地条件などを事前に確認し、測定目的に適した本体とプローブを選定する必要がある。
1. 測定目的・信号条件を確認する
観測したい信号や現象を明確にし、電圧、周波数、立ち上がり時間、接地条件などを確認する。
2. 本体・プローブを選定する
測定対象に応じて、帯域幅、サンプリングレート、垂直分解能、チャンネル数、入力仕様などを確認し、本体とプローブを選ぶ。
3. 安全性を確認して接続する
本体・プローブの入力定格や接地条件を確認する。プローブの種類に応じた補正・調整(受動プローブの補正、電流プローブのゼロ調整など)を行い、減衰比の設定をプローブに合わせてから、測定対象に接続する。
4. 波形の表示条件を設定する
電圧レンジ、時間軸、入力結合などを設定し、対象波形が見やすく表示されるよう調整する。
5. トリガを設定して波形を取得する
観測したい現象に応じたトリガ条件を設定し、波形を取得する。単発現象はシングルモード、条件成立時のみ繰り返し取得したい異常波形はノーマルモードで捕捉する。
6. 測定結果を解析・保存する
カーソル、自動測定、演算、FFT、デコードなどを利用して波形を解析し、必要に応じて波形データや測定結果、設定情報を保存する。リンギングやノイズが、プローブや接地の影響でないかも確認する。
測定時の注意点
-
接地とグランドループ:
一般的なベンチ型オシロスコープの入力グランドは保護接地と接続されていることが多い。接地電位ではない点へ通常のプローブのグランドを接続すると、回路の短絡や機器損傷につながるおそれがある。フローティング電位や高電圧差動信号を測定する場合は、差動プローブや適切な絶縁測定手段を使用する。
グランドループは、測定系の複数の接地経路の間に電位差が生じ、そこへ電流が流れることで、ノイズやハムが波形に重なる現象である。被測定物とオシロスコープの接地の取り方や、複数の機器を接続する際の接地経路に注意する。
安全上、フローティング測定を目的としてオシロスコープの電源プラグの接地線(保護接地)を外してはならない。感電や機器損傷のおそれがあるため、差動プローブや絶縁入力型オシロスコープなど、定格に適した絶縁測定手段を使用する。 - プローブの影響: プローブを接続すると、入力抵抗や入力容量によって測定対象へ負荷が加わる。特に高速・高インピーダンス回路では、プローブによって波形が変化する場合があるため、入力容量や接続方法、グランドリード長などを考慮する。
- エイリアシング:サンプリングレートが不足すると、実際より低い周波数の波形に見えるエイリアシングが発生する場合がある。時間軸を変更した際に波形の見え方が大きく変わる場合などは、サンプリング条件を確認する。
- 帯域制限とノイズ:必要以上に広い帯域で測定すると、高周波ノイズまで取り込む場合がある。対象信号に応じて帯域制限機能を使用することで、観測したい成分を確認しやすくなることがある。
校正・日常点検
測定値の信頼性を維持するには、本体だけでなくプローブを含めた状態管理が必要である。
- 定期校正:校正はメーカーが定める方法・仕様に従い、周期は要求精度、使用頻度、使用環境、社内の品質管理基準などから決める。
- 日常点検:本体、プローブ、ケーブル、コネクタの損傷を確認する。
- プローブの調整:補正機構を備えた受動プローブは必要に応じて補正状態を確認し、高電圧プローブや電流プローブは各製品の手順に従って点検、ゼロ調整、デガウスなどを行う。
— GLOSSARY オシロスコープ関連用語
- 帯域幅 :正弦波入力の振幅が約−3dB(約70.7%)に低下する周波数。測定できる周波数範囲の目安
- サンプリングレート :1秒間に取得するサンプル数。S/sで表す
- メモリ長/レコード長 :1回の取り込みで保存できるサンプル数
- チャンネル数 :同時に入力できるアナログ/デジタル信号数
- 波形更新速度 :一定時間あたりに波形を捕捉・表示できる回数の目安
- 垂直分解能 :A/D変換で電圧方向を何段階に分けて表現するかを示す。ビット数で表され、8bitなら256段階
- 入力インピーダンス :オシロスコープ入力が測定対象に与える電気的負荷に関係する仕様
- トリガ :指定した条件を基準に波形取り込みを開始・同期する機能
- 立ち上がり時間 :信号が低レベルから高レベルへ遷移する速さを表す指標。一般に振幅の10%から90%(または20%から80%)に達するまでの時間
- FFT :時間波形を周波数成分へ変換して表示する解析機能
帯域幅と立ち上がり時間の関係
オシロスコープの帯域幅は、正弦波だけでなくパルスやデジタル信号の立ち上がりを観測する際にも重要である。立ち上がりが速い信号ほど高い周波数成分を含むため、測定系の帯域幅が不足するとエッジが実際より緩やかに表示される。オシロスコープ本体だけでなく、プローブを含む測定系全体の帯域を確認する必要がある。
オシロスコープ自身の帯域幅と立ち上がり時間には、おおむね「立ち上がり時間(10%〜90%)≒0.35÷帯域幅」の関係がある(周波数特性により0.35〜0.45程度)。たとえば帯域幅350MHzのオシロスコープの立ち上がり時間は約1nsであり、立ち上がり時間1nsの信号を測定すると、エッジが実際より緩やかな約1.4ns程度に表示される。
— COMPARISON オシロスコープと他の測定機器との違い
オシロスコープと目的が近い測定器には、デジタルマルチメータ、ロジックアナライザ、スペクトラムアナライザなどがある。いずれも電気・電子回路の測定や評価に使用されるが、測定対象や得意とする解析内容が異なる。目的に応じて使い分けることが重要である。
| 比較対象機器 | 主な測定・解析対象 | オシロスコープとの具体的な違い・使い分け |
|---|---|---|
| デジタルマルチメータ | 電圧・電流・抵抗など | 数値として精密に測定する用途に適する。オシロスコープは時間変化を波形として観測し、瞬間的な変動やノイズ、タイミングなどを確認できる。 |
| ロジックアナライザ | デジタル信号・論理状態 | 多数のデジタル信号を論理レベルとして記録・解析する。オシロスコープは電圧波形そのものを観測し、信号品質や立ち上がりなども確認できる。 |
| スペクトラムアナライザ | 周波数・スペクトル | 周波数領域で信号レベルやスペクトルを詳しく測定する。オシロスコープは主に時間領域で波形を観測する。 |
| データロガー | 電圧・温度などの長時間変化 | 長時間の連続記録に適する。オシロスコープは高速な信号変化や瞬間的な異常の観測に向く。 |
| パワーアナライザ | 電圧・電流・電力 | 電力や効率などの定量評価に適する。オシロスコープはスイッチング波形や過渡現象などの観測に向く。 |
— FREQUENTLY ASKED QUESTIONS よくある質問
A. 基本となる測定対象は電圧の時間変化である。そこから振幅、周期、周波数、立ち上がり時間、パルス幅、複数信号間の時間差などを読み取れる。電流を見たい場合は、電流プローブを使う方法や、シャント抵抗の両端電圧から求める方法がある。
A. 観測対象の最高周波数だけでなく、パルスやデジタル信号に含まれる高周波成分、必要な波形再現性を考慮して選ぶ。本体とプローブを組み合わせた測定系の帯域も確認する。目安は、正弦波なら信号周波数の3〜5倍以上、デジタル信号なら立ち上がり時間から概算した周波数成分の3〜5倍である。
A. 必ずしも高ければよいわけではない。高いほど高速な変化を細かく記録しやすいが、それだけで測定性能は決まらない。メモリ長、記録したい時間、使用チャンネル数との組み合わせで実際のサンプリング条件が決まるため、用途に必要な条件を満たすかを見る。
A. 電流プローブを使用する方法や、既知のシャント抵抗の両端電圧から電流を求める方法がある。測定電圧、帯域、絶縁、安全性などに適した方法を選ぶ必要がある。
A. グランド基準ではない2点間の電圧、高電圧スイッチング回路、フローティング信号などを測定する際に使用される。最大差動電圧、コモンモード電圧、帯域幅などを確認する。
A. トリガ条件が適切でない、信号レベルが小さい、ノイズが多い、プローブ接続が不適切、時間軸や電圧レンジが合っていないなどが考えられる。
A. まず測定対象の電圧、周波数、立ち上がり時間、同時に見る信号数を整理する。そのうえで、帯域幅、サンプリングレート、メモリ長、チャンネル数、入力仕様を絞り込み、必要に応じて波形更新速度、トリガ、解析機能、プローブ、外部インターフェースまで確認する。
A. 補正機構を備えた受動電圧プローブを使用する際に、本体のプローブ補正用信号(矩形波)を観測し、波形の角が丸くなったり突出したりしないようプローブの補正容量を調整する作業である。プローブとオシロスコープ入力の特性を合わせるため、使用する入力チャンネルやプローブを変更した場合などに確認する。
A. 10:1プローブは信号を10分の1に減衰させて入力する分、入力容量が小さく、高い周波数まで測定しやすいため、一般的な測定で標準的に使用される。1:1プローブは減衰しないため微小な信号を観測しやすいが、帯域が狭く入力容量が大きい。いずれも、本体側の減衰比設定をプローブに合わせる必要がある。
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■ 製品ナビおすすめメーカー
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高精度16ビットUSBオシロスコープ PicoScope 5000Eシリーズ
企業名:(株)アムテックス
帯域幅:60〜500MHz
チャンネル数:アナログ4ch/デジタル16ch(MSOのみ)
最大サンプリングレート:2.5〜5GS/s
タイプ:PC接続型(USB)
デジタル・オシロスコープDS1000Zシリーズ
企業名:リゴルジャパン(株)
帯域幅:50〜100MHz
チャンネル数:アナログ4ch/デジタル16ch(Plusモデル・オプション追加時のみ)
最大サンプリングレート:1GS/s
タイプ:ベンチトップ型(デジタル/MSO対応)
デジタルオシロスコープ ハイコストパフォーマンスモデル DSO2000シリーズ DSO2C10/DSO2C15/DSO2D10/DSO2D15
企業名:(有)エスシーエス
帯域幅:100〜150MHz
チャンネル数:アナログ2ch
最大サンプリングレート:1GS/s
タイプ:ベンチトップ型(デジタル)
4CHデジタルストレージオシロスコープ DCS-1054B
企業名:(株)テクシオ・テクノロジー
帯域幅:50〜100MHz
チャンネル数:アナログ2〜4ch
最大サンプリングレート:1GS/s
タイプ:ベンチトップ型(デジタルストレージ)
高性能デジタル・オシロスコープ T3DSO700HDシリーズ
企業名:テレダイン・ジャパン株式会社レクロイ
帯域幅:70〜200MHz
チャンネル数:アナログ4ch/デジタル16ch(オプション)
最大サンプリングレート:2GS/s
タイプ:ベンチトップ型(デジタル/MSO対応)
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オシロスコープによる測定は、本体だけで完結するとは限らない。測定する電圧・電流、周波数、基準電位、解析内容に応じて、プローブやアクセサリ、ほかの測定器を組み合わせる。