高効率と安全性を同時に実現した軽量な固体型水素燃料電池を開発。スマートフォンからポータブル発電機向けまでをラインアップ
燃料電池は、従来の蓄電池や充電池と比較して高効率化や小型軽量化が可能なため、今後の普及と市場拡大が期待されています。既にメタノールや水素を使った燃料電池の普及が始まっていますが、メタノール燃料電池は高出力化が難しく、水素燃料電池については高出力化が可能なものの、ボンベを使用するために小型化や取扱いが難しいというデメリットがあり、普及の障害となっていました。
今回、ロームとアクアフェリーは、独自の技術により水素化カルシウムをシート状に固形化することに成功し、体積3ccに満たないシート(38×38×2mm3)と水から約4.5Lの水素を発生させ、5Whrの電力を発生させることが可能となりました。この水素燃料電池は、小型かつ常温動作が可能なことから、スマートフォンの充電はもちろん、タブレットやPCなどのバッテリーや、アウトドアや僻地での動力源、災害用バックアップ電源としても使用できます。環境面においても、水とカルシウム系燃料という安全な物質を使用しているため二酸化炭素や有害ガスなどを一切排出せず、廃棄時も一般廃棄物として廃棄可能で、従来の各種電池と比較して極めて環境に対する親和性が高い電池です。
本技術は、ロームが保有する電源回路技術やアプリケーション開発技術と、水素燃料電池の開発面で高い技術を組み合わせることにより実現したもので、2010年秋に京都大学で開催された産官学連携の為の「京都大学アドバンスドエレクトロニクスシンポジウム(AES)」をきっかけとして、両社で情報交換をスタート、今回の開発に至ったものです。
ローム、アクアフェアリー、京都大学では、今後信頼性評価やさらなる改良を進め、2013年の製品化を目指します。また、この水素燃料電池は、CEATEC JAPAN(2012年10月、千葉)とElectronica(2012年11月、ミュンヘン)のロームブースにて展示を行います。
また、ロームとアクアフェアリーでは、スマートフォンの充電用など独自製品のラインアップを進めることに加えて、株式会社近計システムと共同で、電源が確保できない遠隔地の地震計用燃料電池の開発を進めています。この製品は、今回開発したシート型燃料電池を使用することにより、従来の鉛蓄電池に比較して重量で1/4と軽量化に成功。わずか3kgで400Whrの大容量を実現しており、この2013年4月に発売を予定しています。
今後もロームが長年培った回路設計技術、アプリケーション技術と、アクアフェアリーの燃料電池技術を組み合わせて様々な用途に適した燃料電池開発を進めていきます。また、開発にあたっては京都大学平尾教授のご協力をいただき、今後は次世代の水素発生剤や資源利用システムについて共同研究を進めていきます。
<特長>
1.小型、軽量
2.高容量、高出力
電池容量5Whrのスマートフォンであれば、約2時間でフル充電可能です。
3.環境にやさしい
今回開発した水素燃料電池は、水を入れると水素を発生する固体を使っており、水の合成を利用して発電ができるため、発電時の生成物は水(水蒸気)だけで炭酸ガスや有害物質(揮発性有機化合物:VOC)も生じません。廃棄時も一般廃棄物として廃棄可能な環境にやさしい燃料電池です。
4.20年の長期保存が可能
乾電池やリチウムイオン電池は常に電位差を持っているため、使用しなくても放電し、取り出せる電気の量が徐々に減少するため、保存可能な期間は3〜5年となっています。今回開発した水素燃料電池は、アルミラミネートで燃料の劣化を防ぐことで、エネルギーをロスすることなく、20年以上の長期保存が可能です。必要な時に電力に変えることができます。
<水素燃料電池の用途例>
1.スマートフォン充電器
2.地震計用大容量燃料電池(3kg、5.6L)
3.携帯型発電機(7kg、17L)
