ショットキーダイオードレスのSiC-MOSモジュールの量産を開始、1200V/180A対応でインバータにおける電力損失を大幅に低減
半導体メーカーのローム株式会社(本社:京都市)は、産業機器や太陽光発電のパワーコンディショナー等のインバータ、コンバータ向けにSiC−MOSモジュール(定格1200V/180A)の量産を開始します。
同製品は、※業界で初めて内蔵するパワー半導体素子をSiC−MOSFETのみで構成したモジュールで、定格電流を180Aに高めたことで応用範囲が広がり、さまざまな機器の低消費電力化・小型化に大きく貢献します。
なお、生産拠点はローム本社工場(京都市)で、既にサンプル出荷を開始しており、12月より量産・出荷を開始する予定です。
※12月12日現在 ローム調べ
<背景>
ロームでは、2012年3月に世界で初めて内蔵するパワー半導体素子を全てシリコンカーバイドで構成したかフルSiCパワーモジュール(定格1200V/100A)の量産を開始。産業機器などでの採用・検討が進んでおりますが、一方で小型モジュールサイズを維持したままでの大電流化に対する要望も多く、その開発が期待されていました。
通常、大電流化のためにはMOSFETの搭載個数を増やすなどの対応が考えられますが、整流素子であるダイオードもセットで必要となるため、小型サイズの維持が非常に難しい状況でした。
<新製品の詳細>
今回、ロームでは、ボディダイオードの通電劣化を解消した第2世代のSiC-MOSFETを採用することにより、整流素子であるダイオードを必要としないSiCパワーモジュール(SiC-MOSモジュール)の開発に成功。SiC-MOSFETの搭載面積を増加させることが可能となり、小型モジュールサイズを維持したままでの大電流化を実現しました。
内蔵するSiC-MOSFETは、結晶欠陥に係わるプロセスとデバイス構造を改善することにより、ボディダイオードをはじめ信頼性面での課題をすべて克服することに成功しています。
これらにより、一般的なインバータで使用されているSi-IGBTに比べて、損失を50%以上削減。低損失化を実現するとともに50kHz以上に高周波化することで、周辺部品の小型化にも貢献します。
<特長>
1.MOS単体でもスイッチング特性は、そのまま
テイル電流がない低損失なスイッチングが可能
SBDを削除しても従来品と同等のスイッチング特性を実現。Si-IGBTで見られていたテイル電流が発生しないため、損失を 50% 以上低減することが可能で機器の省エネ化に貢献します。またSi-IGBTでは不可能であった50kHz以上のスイッチング周波数も可能となるため、周辺機器の小型・軽量化も実現できます。
2.逆方向導通が可能となったことで、高効率な同期整流回路を実現
一般的にSi - IGBT デバイスは逆方向に導通させることができませんが、SiC-MOSFETはボディダイオードで常に逆導通が可能です。また、ゲート信号を入れることによりMOSFETの逆導通も可能で、ダイオードのみの場合に比べて、より低抵抗にすることができます。これらの逆導通特性により、1000 V 以上の領域においても、ダイオード整流方式に比べて高効率な同期整流方式の技術を採用することが可能となります。
3.ボディダイオードの通電劣化を解消
通電時間が1000時間以上でも特性劣化なし
ボディダイオード通電により欠陥が拡がるメカニズムを解明し、プロセス・デバイス構造により発生要因を抑えることに成功。
一般的な製品は20時間を超えるとオン抵抗が大幅に増大していましたが本製品は、1000時間以上の通電時間でも オン抵抗が増大しません。
