ロームが SiCデバイスの一貫生産体制を確立 低駆動電圧、高効率の SiCショットキーバリアダイオードの量産スタート
この新製品は、2010年 4月下旬から既に量産・出荷を開始しており、需要動向を見ながら順次生産を拡大してまいります。生産拠点はウエハ製造はサイクリスタル社(ドイツ・エルランゲン市)、前工程がローム・アポロデバイス株式会社(福岡県)、後工程が ROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltd.(タイ)となっております。
近年、パワーエレクトロニクスの分野では、電力変換時に半導体デバイスで消費される損失が問題となっており、エコロジーの観点からもさらなる低損失化を目指してシリコンよりも材料物性に優れた SiCによるパワーデバイスの研究開発が進んでいます。こうした流れを先取りしてロームでは 2004年に SiCを用いた MOSFETの試作に成功、SBDやこれらのデバイスを用いたパワーモジュールの試作に成功するなど、業界に先駆けて SiCデバイス/モジュールの研究開発を進めてまいりました。SiCの SBDについては、2005年からエンジニアリングサンプルの出荷を開始し、お客さまからのフィードバックを得ながら信頼性の向上と生産性の改善に努めてまいりました。また、高品質 SiCウエハの確保のため、ドイツ・サイクリスタル社を買収し、SiCデバイスの一貫生産体制の確立に取り組んできました。
今回量産を開始した「SCS110Aシリーズ」は、逆回復時間(trr)が 15nsecと従来のシリコン製ファストリカバリダイオード(35nsec〜50nsec)と比較して大幅に短縮、リカバリ時の損失を約 3分の1に低減しました。これにより、インバータ、コンバータ、PFC回路に採用した場合、損失の大幅な低減により発熱量が低減できます。加えて、シリコン製の FRDと比較して、温度変化時の特性変化が極めて少ないため、ヒートシンクが小型化できるなど大きな効果が期待できます。また、従来の SiC製 SBDと比較しても、trrのさらなる改善やチップサイズを 15%程度小型化、などの特長を有しています。
量産化にあたっては、ショットキーコンタクト障壁の均一性や、高温処理が不要な高抵抗のガードリング層形成といった SiCデバイスで課題とされる事項を解決し、社内で一貫生産できる体制を確立しております。
また、既に量産されている従来の SiC SBDと比較して動作時抵抗を小さくするとともに順方向電圧の低電圧化(VF=1.5V(標準値)10A時)と温度特性の改善を実現、従来以上の高効率を実現しました。
ロームでは、SiCデバイス事業を次世代半導体事業の中核技術の一つして位置付けており、SBDのさらなる高耐圧化、大電流化製品のラインアップの強化のほか、MOSFETや SiCデバイスを搭載した IPM(インテリジェント・パワー・モジュール)など SiC関連製品のラインアップ拡充、量産化を進めてまいります。



















