ロームが世界で初めて SiCトランジスタ(DMOSFET)の量産を開始 画期的な低オン抵抗と高速動作を両立
化に向けての障害となっていた問題点を、独自のプロセス技術とスクリーニング法の開発によりすべて解決、量産化に成功したもので、エアコン、太陽電池、産業機器などで電力変換を行うインバータ、コンバータ向けをはじめ、幅広い応用が可能です。
この新製品は、2010年 12月からカスタム品として量産・出荷を開始いたしました。また、2011年夏には汎用品としての出荷を計画しており、その後 1年ほどかけて耐圧 600Vから 1200V、電流 5Aから 20Aの範囲でラインアップを拡大していく予定です。生産拠点は、ウエハ製造はサイクリスタル社(ドイツ・エルランゲン市)、前工程がローム・アポロデ
バイス株式会社(福岡県)、後工程が ROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltd.(タイ)となっております。
近年、パワーエレクトロニクスの分野では、電力変換時に半導体デバイスで消費される損失が問題となっており、エコロジーの観点からもさらなる低損失化を目指してシリコンよりも材料物性に優れたSiCによるパワーデバイスの研究開発が進んでいます。こうした流れを先取りしてロームでは2004年にSiCを用いたMOSFET の試作に成功、その後スイッチング素子、整流素子を全てSiCデバイスで構成したパワーモジュールの試作に成功するなど、業界に先駆けてSiCデバイス/モジュールの研究開発を進めてまいりました。2010年4月には日本で初めてSiC製SBD(ショットキーバリアダイオード)の量産化に成功、その後も大電流化に向けて製品ラインアップの拡充を進めています。また、高品質SiCウエハの確保のため、ドイツ・サイクリスタル社を買収し、SiCデバイスの一貫生産体制の確立に取り組んできました。
今回量産を開始した新製品は、耐圧600Vでオン抵抗が0.4Ωと同耐圧・同チップサイズのシリコンのDMOSFETと比較して10分の1以下の低オン抵抗を実現しました。またスイッチング時間をオン抵抗の低いシリコンのIGBT と比較して約5分の1以下に短縮、これまでシリコンのデバイスでは実現できなかった高速と低オン抵抗を同時に実現しました。これにより、インバータ、コンバータなどに採用した場合、損失の大幅な低減だけでなく、高周波化に伴い周辺部品の小型化が可能なことから、実装面積の縮小や周辺部品のコストダウンも実現できます。加えて、シリコン製のトランジスタと比較して、高温時の抵抗上昇が極めて少ないため、高出力時の導通損失が小さいという点でも大きな優位性があります。現在販売中のSiC-SBDと組み合わせて電源回路を構成することで、より低消費電力で小型なシステムの開発に貢献できます。
量産化にあたっては、長年世界中のメーカーで品質改善の取り組みがされてきましたが、特にトランジスタでは多くの課題があり、量産化には至っていませんでした。ロームでは、独自の電界緩和構造の開発や、独自のスクリーニング法を開発することで信頼性を確保、また、SiC特有の1700℃に及ぶ高温プロセスでの特性劣化を抑制する技術などを開発し、世界で初のSiCトランジスタ(DMOSFET)量産体制を確立することができました。
ロームでは、SiCデバイス事業を次世代半導体事業の中核技術の一つとして位置付けており、DMOSFETやSBDのさらなる高耐圧化、大電流化製品のラインアップの強化のほか、トレンチ構造MOSFET やSiCデバイスを搭載したIPM(インテリジェント・パワー・モジュール)などSiC関連製品のラインアップ拡充、量産化を進めてまいります。
以 上