トレンチ構造採用のSiC-MOSFET を開発・量産、大幅な低オン抵抗化により産業機器などの大電力機器の小型・低消費電力化に貢献
なお、今回開発したSiC-MOSFET は、パワーモジュール化した製品での提供を予定しており、5月よりサンプル出荷、6月より量産を開始する予定です。生産拠点は、前工程がローム・アポロ株式会社(福岡県)、後工程がローム本社工場(京都市)となります。
また、今後はディスクリートパッケージ品を含めたラインアップ展開も順次行う予定です。
<背景>
近年、世界規模で電力供給問題への対応が求められている中、発電した電力をいかに効率的よく輸送し、利用するかといった電力変換に注目が集まっています。こうした電力変換時の損失を劇的に減らすキーデバイスとして期
待されているのがSiC パワーデバイスです。ロームでは2010 年にSiC MOSFET の量産化に成功するなど、業界をリードする製品開発を行い、さらに電力損失低減を実現させるデバイス開発を進めてまいりました。
<特長>
1. トレンチ構造の採用により、低オン抵抗デバイスを実現
これまでも、SiC-MOSFETにおけるトレンチ構造の採用はオン抵抗低減に有効であるという理由から注目されていましたが、デバイスの長期信頼性を確保するため、ゲートトレンチ部分に発生する電界を緩和する構造を確立する必要がありました。
今回、ロームは独自構造の採用によりこの課題を克服し、世界で初めてトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETの量産化に成功しました。既に量産中のプレーナー型SiC-MOSFETに比べ、オン抵抗を約50%低減、あわせてスイッチング性能(入力容量を約35%低減)の向上を実現しています。
2. フルSiCパワーモジュールの展開
今回、開発したトレンチ構造SiC-MOSFETを使用したフルSiCパワーモジュールを開発しました。
内部回路は2in1構成で、SiC-MOSFETおよびSiC-SBDを用いた1200V/180A定格の製品となります。
同等レベルの電流定格であるSi-IGBTモジュール製品と比較した場合はもちろん、プレーナー型SiC-MOSFETを使用したフルSiCモジュールと比較した場合も、スイッチング損失を約42%低減しています。
