多様な電源に対応した低消費電力のリアルタイムクロックモジュール 「RX-4035SA/LC」「RX-8035SA/LC」を開発
近年の省エネ意識の高まりに伴う電子機器の低消費電力化の流れの中で、電子機器に現在時刻を保有させるために、時計機能を内蔵したマイクロコントローラーではなく、極めて低消費電力で現在時刻の保有が可能なリアルタイムクロックを使用する事例が増加しています。
リアルタイムクロックを使用する場合には、電子機器の主電源が切れても、バックアップ電池でリアルタイムクロックを動作させ続ける電源切り替え回路が必要です。このために外付けで、専用のパワーマネジメントICを利用する場合もありますが、ほとんどの場合はダイオードを使用した簡単な電源切り替え回路によって、主電源とバックアップ電池を切り替えています。しかし、ダイオードのリーク電流による電池のパワーロスおよび順方向電圧低下による電池の充電電圧低下といった課題があり、より低消費電力で効率的なソリューションが求められていました。
このような要望に応えるためにエプソンは、リーク電流や電圧降下が極めて少なく、電池のパワーを最大限に発揮させる電源切り替え機能を内蔵したリアルタイムクロックモジュール「RX-4035SA/LC」「RX-8035SA/LC」を開発しました。
本モジュールの電源切り替え機能は、乾電池・ボタン電池・充電式電池のほか、低消費電力のリアルタイムクロックに適した電気二重層キャパシタ(*2)にも対応しています。
また、夜間や休日および停電時などのシステムダウン中でも、防犯信号や緊急信号の発生時刻を記録するイベントレコーダー機能も搭載しています。イベントレコーダーはチャタリングフリー回路(*3)を内蔵したイベント入力端子を2系統装備し、年から秒まで1回分の記録が可能です。
このほかデュアルアラーム、クロック出力を搭載し、計時消費電力はSAパッケージタイプが350nA(Typ.)、LCパッケージタイプが400nA(Typ.)を実現しています。また時計精度は常温環境で月差13秒相当と1分相当の2つの精度から指定できます。
なお「RX-4035SA/LC」はSPIインタフェースに、「RX-8035SA/LC」はI2C-Bus(*4)インタフェースに対応しています。
本シリーズは、あらゆる電子機器の低消費電力化と、高精度な時刻情報の実現に貢献するものです。今後も水晶デバイスのリーディングカンパニーであるエプソンはお客様の安心・安全・快適に寄与してまいります。
■リアルタイムクロックモジュール「RX-4035SA/LC」「RX-8035SA/LC」の主な特長
・多機能電源切り替え回路内蔵(リセット出力、電源の外部供給機能を搭載)
・イベント検出機能搭載(2ポート搭載、イベント検出時に割込み出力可能)
・常温時計精度
AA精度:月差13秒相当(オフセットあり) 25度
AC精度:月差13秒相当(オフセットなし) 25度
B精度:月差30秒相当(オフセットあり) 25度
・低消費電力(当社従来製品から約25%低減)
従来製品 RX-4045SA/8025SA:480nA(Typ.)
新製品 RX-4035SA/RX-8035SA:350nA(Typ.)
・小型パッケージ(当社従来製品から、体積で約25%、面積で約30%小型化)
従来製品 NBパッケージサイズ:6.3mm×3.2mm×t1.4mm Max.
新製品 LCパッケージサイズ:3.6mm×2.8mm×t1.2mm Max.
【用語説明】
(*1)リアルタイムクロックモジュール
時計・カレンダ機能等を持ったリアルタイムクロックICと32.768kHz水晶振動子を一つのパッケージに内蔵した製品。これにより、発振回路設計、時計精度調整が不要になると共に、お客様での回路基板のスペース効率を向上できるメリットがあります。
(*2)電気二重層キャパシタ
電気二重層という物理現象を利用することで、蓄電効率を著しく高めたキャパシタ(コンデンサの一種)。
(*3)チャタリングフリー回路
スイッチ信号の入力部に、一定時間以下の短い信号を除去するフィルター回路を設けて、チャタリング現象を無視できる回路を構成した状態を、チャタリングフリーな入力回路と言います。 押しボタンのようなスイッチは、操作のときにチャタリングという現象が発生します。これはスイッチをON/OFFする瞬間に、電気接点が微小時間の衝突を繰り返して、電気信号が何度も発生してしまう現象のことです。一回の信号発生操作が、複数の信号発生になるため、この信号を電子回路に直接つなぐと誤動作の原因になります。このようなトラブルを防止するための回路です。
(*4)I2C-Bus
集積回路間の通信リンクのための2線式双方向バス。I2C-Busは、NXP Semiconductorsの登録商標です。
