小型の原子発振器『AO6860LAN』を開発
セイコーエプソン株式会社(社長:碓井 稔、以下エプソン)は、このたび、通信ネットワークおよび産業分野向けに、高安定・小型の原子発振器『AO6860LAN』を開発しました。量産開始は2016年を予定しています。
通信ネットワーク市場は、通信の高速化、ビッグデータ解析やICT領域拡大、IoT普及に伴う大容量化が急速に進んでいます。それを支える通信インフラ機器には、第一に通信の安定性、そしてシステム構築における小型化が要求されます。
原子発振器は原子の固有周波数を基準とした正確な発振器で、従来の水晶を用いた発振器と比べると一般的には2桁以上高い精度が得られます。このため、主に高速通信機器や高精度計測器などに用いられ、安定した通信や測定を実現するための周波数源として今後需要の拡大が見込まれています。しかしながら小型化が難しく、設置スペースに限りのある基地局などではサイズが制約になっていました。
エプソンは、これまでも通信インフラ機器に向けて原子発振器を提供してきましたが、本製品は新方式を採用し、内製のレーザー素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)および専用ICを独自設計することで、当社従来機種(1,200cc)と同等の長期周波数安定度を維持しながら、体積比1/16(75cc)の小型化を実現しました。また、制御システムの最適化により消費電力も従来比1/6に抑えました。
これにより、お客様には信頼性の高い通信インフラや計測システムをより小型で低消費電力にて実現することが可能になります。
なお、本開発の成果を2015年11月4日英国エジンバラにて、国際的な通信同期技術についての発表の場であるITSF(International Telecom Sync Forum)にて発表いたします。
本原子発振器と、量産中のOCXO、VCXO、TCXOといった高精度水晶発振器のラインアップにより、光通信ネットワークを始めとする今後の大容量通信網を構築する機器を幅広くカバーし、安心かつ小型のシステム開発を支援します。
エプソンは今後も、独創の技術により、高安定なデバイス・モジュールを提供し続けることで、各種通信ネットワークインフラ市場、計測器市場を支えて参ります。
■主な用途
①通信インフラ機器
②放送機器
③産業機器
④計測器
などに求められる基準信号発生源。
■本製品の仕様
製品型番:AO6860LA
n短期周波数安定度:0.05ppb (τ=1sec)
温度周波数安定度:±0.2ppb (0~50℃)
長期周波数安定度:±0.05ppb/month
消費電力:3W
サイズ:68x60x18mm (75cc以下)
