組込み技術 ブログ (日本語訳:2025年4月1日 公開)
コンガテックのウェブサイトでは、各分野のエキスパートによる エンベデッド テクノロジー ブログ「Embedded Insights」(英語版)
を公開しています。
その日本語訳を随時、こちらのページで公開しています。組込みシステムやエッジコンピューティング、エッジAI 製品開発のヒントにご活用ください。
コンガテックの組込み技術ブログ (日本語訳:2025年4月1日 公開)
[目次]
#002: COM-HPC Mini - パート2:ピン配列
#003: コンピューター・オン・モジュール規格のパワーとフレキシビリティーの解説: 包括的な概要
#008: 「いろいろなことが少し刺激的」:AMD Ryzen Embedded 8000はもっと注目されるべき
#010: 無名のヒーローから受賞スターへ:コンガテックの conga-TCR8 に脚光
#011: コンピューター・オン・モジュールがどのように農業に力を与えるのか
#012: PS5 Pro のようなパフォーマンスを組込みシステムに導入
#013: スケーラブルでモジュール式、これをソフトウェア・デファインドにできますか?
#014: COM-HPC Mini - パート4:コネクタ
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[最新の投稿]
#014: COM-HPC Mini - パート4:コネクタ
-----[クリスチャン・エダー(Christian Eder)](2分)
COM-HPC 基本仕様の Rev. 1.2 がリリースされ Mini サイズが導入されると同時に、コネクタの改善もおこなわれました。 この機能強化は、Mini サイズだけでなく、COM-HPC Server モジュールや COM-HPC Client モジュールにも適用されます。
コネクタの性能
400 ピンのハイスピード コネクタは元々 Samtec によって設計されましたが、加えて現在は All Best と Amphenole という 2社のサードパーティ ベンダーも、このコネクタのライセンス バージョンを供給しています。
最初のリリース以来、コネクタは 2種類のアップデートがおこなわれました。 目に見えるアップデートは、コネクタの両側にある金属溶接タブです。 これらの溶接タブは、キャリアボードとモジュールのスルーホールにハンダ付けされています。 コネクタの PCBフットプリントのパッドサイズは、通常のリフロー プロセス中にこれらのスルーホール ピンをハンダ付けできるように設計されています。 この、より堅牢なバージョンのハイスピード コネクタを使用するために、追加のハンダ付けプロセスは必要ありません。
新旧のコネクタ バージョンは、あらゆる組み合わせで完全に嵌合し、完全な下位互換性が保証されています。 ただし、設計を古いコネクタから新しいコネクタに切り替える場合には、2つのスルーホールに対応するために、少しレイアウトをアップデートしなければならず、コネクタの幅も少し変更する必要があります。
コネクタの目に見えない方の変更点は、さらに高いデータ スループットのサポートです。 信号の仕様がアップデートされ、56 Gbps NRZ と 112 Gbps PAM4 がサポートされるようになりました。 Gen6 の PCIe 仕様が安定したため、COM-HPC は PCIe Gen6 をサポートし、優れた Gen5 のパフォーマンスをさらに2倍にすることが期待されます。
COM Express との比較
COM-HPC Mini を COM Express Compact と比較すると、状況は少し異なります。 サイズについては COM-HPC Mini のほうが有利です。
性能を比較すると、違いがわかります。 COM-HPC Mini のほうがピンが多く(400 vs. 220)、コネクタもはるかに高速です。 その結果、機能セットがはるかに豊富になり、スループットが極めて高くなります。 すべての IOの理論上の最大パフォーマンスは、19 GB/秒 に対して 277 GB/秒になります。 COM-HPC Mini は計算上、25倍高速になります。
COM-HPC Mini を COM Express Compact と比較すると、状況は少し異なります。 サイズの利点は COM-HPC 側にあります。
機能的にはかなり近いです。 もちろん、COM-HPC には USB4 や SoundWire などの最新のインターフェースがあり、さらに最大 4つのイーサネットもサポートしています。
最近、COM Express規格がRev. 3.1にアップデートされて PCIe Gen 4 をサポートしたため、提供されているすべてのインターフェースの理論的な IO パフォーマンスを計算すると、COM Express Type 6 の性能も良くなりましたが、それでも、COM-HPC Mini は依然として 3倍優れています。
まとめ
COM-HPC、特に新しく導入されたMini のサイズとタイプは、高いパフォーマンスが要求されながらもスペースと電力が制限される、多くのアプリケーションに最適なソリューションです。 これは、PICMG という強力な標準化団体の支援を受けた新しい規格ですが、既存のコンピューター・オン・モジュール規格の中で、新星として成長していくことは明らかです。
投稿者:クリスチャン・エダー(Christian Eder)
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#013: スケーラブルでモジュール式、これをソフトウェア・デファインドにできますか?
-----[ティモ・ポイコネン(Timo Poikonen)](2分)
これまでに FPGAを使って必要な機能をすべて実装したモジュールの設計を検討して、その複雑さと困難さに圧倒されたことはありませんか? 最終バージョンに対して暫定の仕様が制限されすぎているかもしれい、あるいは、特定の決定をすることで、要件の変化に適応する能力が制限される可能性があるかもしれないと心配することは珍しいことではありません。
さらに、今日の状況では、サイバーセキュリティやアプリケーションに関連する規制、消費電力の制限、環境上の課題、そして物理的なサイズの制約など、コア・コンピューティング部分に対する外部からの要求が増えてきています。
これらは明らかに難しい課題です。 しかし、標準化されたビルディングブロックが役立つという良いニュースもあります。 ビルディングブロックは、スケーラブルで将来性のある機能を提供するだけでなく、ライフサイクル管理の合理化やTCO(総所有コスト)の最適化、ROI の向上にも役立ちます。
コンピューター・オン・モジュール(COM)は、常に COM やアプリケーション固有のI/O 回路を実装するカスタムのキャリアボードと一緒に使用します。 このキャリアボードはどのような形状でも、サイズでも構いません。
たとえば、コンピューター・オン・モジュール(COM)を取り上げてみましょう。 この多目的に使用できるコンポーネントには、さまざまなオープン スタンダードがあり、チップベンダーが提供する CPU の一般的な寿命である 10年をはるかに超えて、PC と同等の機能を提供してきました。 たとえば、COM Express は 20年間市場に出回っています。 つまり COM を活用すると、モジュールを交換するだけで、アプリケーションを新しいプロセッサー世代にアップグレードすることができ、元の設計を変更しなくて済みます。
コンピューター・オン・モジュールは、カスタマー固有のIP と必要なI/O を実装したキャリアボードとペアで使用します。 フルカスタム設計と比較して、この COMとキャリアのアプローチでは、高機能なCOM がアプリケーションレディの既製品として利用できるため、開発が簡素化されます。
さらに、これらのプラットフォームでは、最新のマルチコア テクノロジーにより、仮想化の利点を活かしてハードウェアの統合が可能になります。 ソフトウェアの面では、Microsoft などの一般的なオペレーティング システムや、さまざまな Linux ディストリビューション、および VxWorks や QNX などの特別なオプションなど、さまざまな OSがサポートされています。
ディスクリート コンポーネントを使用してゼロから設計する場合、CPUプラットフォームとして一般的にマイクロコントローラー ベースの SoC が選択されます。 しかし、これらのマイクロコントローラー タイプの SoC には決まったペリフェラルがついており、オプションが制限されます。 標準のCOM でも SoC が使われていることもありますが、このシングルチップのアプローチではスケーラビリティの点で十分ではありません。
では、このギャップをどうやって埋めるのでしょうか。 単一のプラットフォームで真のスケーラビリティを持たせて、複数の CPUアーキテクチャーを実装したヘテロジニアスなシステムを構築するにはどうすればよいでしょうか。 その答えは、キャリアに実装された FPGA と COM を組み合わせることにあります。
有名なシリコンベンダーである AMD やAltera などから、さまざまなオプションが提供されています。 FPGAの性能は、ロジックやメモリー、DSPブロックなどのパラメータによって決まり、コンフィグレーション可能な FPGAの機能がどれだけ複雑で膨大であるかを決定します。 シリコンベンダーは、あらかじめ設計された IPブロックも提供していまが、カスタムの機能を任意のハードウェア記述言語(VHDL や Verilog など)を使用して作成することもできます。
FPGAは、高速イーサネットや MIPI、LVDS、USB など、さまざまなインターフェースの詳細を描くための白紙のキャンバスだと想像してください。 しかしながら、FPGAの機能はインターフェースをはるかに超えています。 マルチコアの ARM CPU や RISC-V の実装、AI/ML タスク用の DSPコア、専用の推論パターン、さらにはセーフティ アイランドなどの機能安全をも実装することができます。
さらに、ソフトウェアコードをハードウェア機能に変換し、FPGA内で IPブロックとして実行することができます。 一部のユースケースでは、このアプローチにより、CPU または GPU で同じ機能を実行する場合と比較して、エネルギー効率やパフォーマンスが向上し、レイテンシーが短縮されます。 既成品でありながらスケーラブルな COM と、キャリアボード上の FPGAを組み合わせることにより、真の迅速設計とセキュリティ、およびスケーラビリティを実現することができます。 このアプローチにより、ハードウェアとソフトウェアの両面からシステム設計をおこなうことができます。
これらのトピックスについてさらに詳しく知りたい、あるいは、この組み合わせで実現できる奇跡のいくつかを実際に体験して、インスピレーションを得たいという方は、2月5日と6日にノルウェーのトロンハイムで開催される FPGAフォーラムに参加することをお勧めします。 私も FPGAのエキスパートと一緒に参加しますので、ぜひお会いしましょう。
すぐに始めたい方は、次のリンクをご覧ください。
・ https://www.fpga-forum.no/
・ https://altera.com/
・ https://www.amd.com/en/products/adaptive-socs-and-fpgas/fpga.html
ティモ・ポイコネン(Timo Poikonen)は、コンガテックのシニア キーアカウント マネージャーで、組込み業界において 20年以上の経験があります。 コンガテックに入社する前は、組込みテクノロジー分野の他の大手企業で同様の役職を務めていました。 ユヴァスキュラ工科大学(Jyvaskyla Institute of Technology)で電気通信テクノロジーの学士号を取得し、そのスキルを工場の現場で応用するところからキャリアをスタートし、現在のアカウント マネージメントの仕事に役立つ実践的な経験を積みました。
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#012: PS5 Pro のようなパフォーマンスを組込みシステムに導入
-----[フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)](2分)
新しい PlayStation 5 Pro は、特に GPU の改良によりゲーム界で話題となっており、クリスマスシーズンのヒット商品になりそうです。 しかし、2020年から変更されていないコンポーネントが 1つあります。 それは、CPU のプロセッシングコアです。 周波数が可変で最大 3.5 GHz の 8つの Ryzen Zen 2 コアにより、依然として優れたコンピューティング パワーを発揮します。
興味深いことに、似たようなプロセッサーが組込み業界でも使用されており、それは AMD Ryzen Embedded V2000 シリーズです。 8個の Zen 2 コア、2.9 GHz のベース周波数、最大 4.25 GHz(V2748)のブーストを備えたこのプロセッサーは、産業用アプリケーションにさらに大きなターボパワーを提供します。
AMD Ryzen Embedded V2000 を搭載したコンピューター・オン・モジュールにより、PS5 Pro のようなパフォーマンスを組込みシステムに導入することができます
コンピューター・オン・モジュール: 産業界における PS5 Pro の威力
PlayStation 5 Pro はゲーム用に最適化されていますが、AMD Ryzen Embedded プロセッサー テクノロジーを搭載したコンピューター・オン・モジュール(COM)は、より幅広いアプリケーションをカバーします。 もちろん、COM は完成したシステムではありません。 モジュールは、CPU やメモリー、インターフェースなど、重要なすべてのコンポーネントを可能な限り小さなスペースに高密度で集積したシステムです。 COMのメリットは、産業用やプロ用のアプリケーションに柔軟にインテグレーションすることができ、アプリケーション固有のキャリアボードに対して、必要なすべての I/O を接続するための標準化されたコネクタにより、高い互換性を提供できることです。
COM のもう 1つの大きな利点は、長期間使用できることです。 コンソールは通常、数年で時代遅れになりますが、産業用システムのライフサイクルは 一般的に10年以上です。 AMD によると、AMD Ryzen V2000 プロセッサーは 2030年まで供給可能であり、このプロセッサーを搭載したモジュールは、長期間使用する産業用アプリケーション向けの、将来性のあるプラットフォームになります。
今日と明日のCPUパフォーマンス
ソニーが PS5 Pro の CPU を変更しないと決めたことは、Ryzen Zen 2 アーキテクチャーが十分なパワーを持っているということを示しています。 組込みの世界では、Zen 2 マイクロアーキテクチャーを搭載したモジュールは、データ処理の多いアプリケーションやリアルタイム処理に優れています。 しかし、それだけではありません。 ソニーは未だに Zen 2 マイクロアーキテクチャーを利用していますが、組込み業界では今や最新の Zen 4 マイクロアーキテクチャーを利用できるようになりました。 これは 4 nm プロセスで製造されているため、さらに優れた処理性能とエネルギー効率を提供します。
コンピューター・オン・モジュールを使用することで、簡単なモジュール交換により AMD Ryzen Embedded 8000 シリーズのような最新のプロセッサーテクノロジーにアップグレードすることができます
コンピューター・オン・モジュールを使用する最大のメリットは、まったく新しいシステムを購入する必要がないことです。 システム全体を再設計することなく、簡単なモジュール交換で最新の AMD Ryzen Embedded 8000 シリーズにアップグレードできます。
さらに、PS5 にも搭載されていない独自の機能も搭載されています。 それは、XDNA と呼ばれる最新のニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)で、新しい AMD Ryzen Embedded 8000 シリーズにおけるトータルの計算能力、39 TOPS のうち 16 TOPS を提供します。
パワフルな組込みソリューション
さて、PS5 Pro レベルのパフォーマンスを組込みシステムに導入する準備はできていますか? たとえば、スマート ファクトリー オートメーションや医療機器、エッジAI、あるいは自律システムなどの開発に従事している場合でも、AMD Ryzen Embedded V2000 と新しい Ryzen Embedded 8000 シリーズを搭載したモジュールが役に立ちます。
皆さんはいかがですか? PS5 Proのようなパフォーマンスよって大きな違いがでると思われる組込みアプリケーションは何でしょうか? 皆さんの意見をお待ちしています!
投稿者:フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)
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#011: コンピューター・オン・モジュールがどのように農業に力を与えるのか
-----[ケンジ・イイジマ(Kenji Iijima)](3分)
私は夏休みに、稲作が盛んな日本の田舎を自転車で20キロ走りました。 途中で、稲に殺虫剤を散布するドローンを見ました。 ドローンは、約30メートル離れたところに立っている農家の人によって、リモコンで操作されていました。 この光景を見て、コンガテックが農業の生産性を向上させる可能性を実感しました。
遠隔操作ドローンを使用する際に農家が直面する課題
ドローンは農家の作業負荷を大幅に軽減しますが、いくつかの課題が残っています。
・ 労働力不足:
20 km を走る間、通り過ぎた風景の8割以上が水田でしたが、農作業をしている人をほとんど見かけませんでした。 1人が一度に操作できるドローンは 1台のみなので、カバーできる範囲は限られています。 そのため、水田全体をカバーするためにはかなり時間がかかります。
・ 農業従事者の高齢化:
日本における農業従事者の平均年齢は、例えばコンガテックの従業員の平均年齢よりもはるかに高くなっています。 多くの農業従事者は、私たちコンガテック社員が定年退職する年齢をはるかに超えています。 そのため、たとえドローンの支援があったとしても、彼らにとって実際の作業負荷が課題であるに違いありません。
・ 熱中症のリスク:
この地域を含む日本の夏は、暑くて湿度が高く、気温は 35℃を超え、湿度は 70%に達します。 このような状況では、30分も外に立っているとめまいがします。 地元の農家はこのような気候に慣れているかもしれませんが、熱中症のリスクがあるため、屋外で過ごす時間を短くしたいと考えるでしょう。
これらの課題に対する可能な解決策
これらの課題に対応するためには、機器をリモートでモニターしコントロールするためのワイヤレス技術を導入することが論理的な解決策のように思えます。 検討すべきワイヤレス オプションには、WiFi、Bluetooth、LPWAN などさまざまなものがあります。 それらの中で最も適しているのは 5Gかもしれません。 それは、5Gが長距離をカバーするだけでなく、多目的サービスや高帯域幅データ伝送のための eMBB(enhanced Mobile Broadband: 超高速)、低遅延で応答性の高い URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications: 高信頼・低遅延)、多数の低消費電力デバイスを接続してバッテリーの持続時間を延ばす mMTC(massive Machine Type Communication: 多数同時接続)などをサポートするからです。
カメラを搭載したドローンが画像を撮影し、5Gネットワーク経由で eMBBを使用してストリーミングすることができるため、オペレーターはドローンの位置と田んぼの状態を遠隔でモニターすることができます。 遠隔から複数のドローンを同時に制御することもでき、コマンドは 5G経由で URLLCを使って送信され、リアルタイムの応答性が確保されます。 さらに、温度や湿度、土壌水分、作物の健康状態などをモニターするためにさまざまなセンサーを設置することもできます。 これらのセンサーは 5G経由でデータを送信し、農家が遠隔で状況をモニターできるようにします。 これには、mMTCが最適で、接続された多数のセンサーからの少量のデータを不定期に送信することをサポートしているため、センサーのバッテリーが長持ちします。
これらの観点から、農家が上記の課題を克服する上で 5G が重要な役割を果たすと考えられます。
5G を活用するために、農家は Vodafone や T Mobile、NTT DoCoMo、ソフトバンクなどの通信会社が提供するパブリック 5G サービスではなく、独自のプライベート 5G インフラストラクチャーを構築することもできます。 プライベート 5G は、次のような場合に有益です。
・ パブリックの 5Gサービスがまだ提供されていない地域
・ セキュリティや帯域幅が理由で、専用のインフラストラクチャーが必要な場合
このような場合、農業の業界では独自のプライベート 5G インフラストラクチャーの構築を検討することもできます。
農業用ドローンへの COM のインテグレーション
コンピューター・オン・モジュール(COM) は幅広い拡張性を備えているため、農業業界の 5G サービスにおける、デバイス(ドローン)と インフラストラクチャー の両方に適しています。
5G デバイスとして動作するドローンの場合、バッテリーの駆動時間を最大限に延ばすために、低消費電力 CPU を搭載した小型フォーム ファクターが最適です。 このようなアプリケーションには、カメラ インターフェースをサポートしている SMARC 規格が適しています。 ドローンのカメラで撮影した画像を SMARC モジュール上の CPU でエンコードし、データを 5G 経由で送信(キャリア ボード上に 5G 通信モジュールが必要)することができます。
インフラストラクチャー側では、 COM Express COM Express と COM-HPC (どちらもサーバータイプ)が候補になります。 COM Express は、無線ユニット(RU)処理の上位にある無線アクセス ネットワーク(RAN)の処理に適しています。 COM Express の CPU は、RAN のデータ処理と制御/アプリケーション タスクの両方を管理するのに十分な性能を備えています。 より高い CPU パフォーマンスや、より高いネットワーク帯域幅、およびより多くのメモリー容量が必要な場合には、COM-HPC の方が適しています。 COM-HPC は、最新世代のテクノロジー向けに、より多くの消費電力と、追加のメモリースロット、およびより高速な通信レーンをサポートしています。 COM-HPC は、5G インフラストラクチャーの容量が中程度の場合、ユーザー プレーン機能(UPF)やモバイル エッジ コンピューティング(MEC)を含むコア ネットワークにも対応可能です。
ケンジ・イイジマ は、コンガテックのフィールド アプリケーション エンジニアです。 2003年から組込みコンピューティングの分野でキャリアを積み、通信と産業用IoT(IIoT)を専門としています。 英国の大学で理学部の修士号を取得しています。 ドイツで 8年間の専門経験を積んだ後、2022年4月にコンガテックジャパンに入社しました。
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#010: 無名のヒーローから受賞スターへ:コンガテックの conga-TCR8 に脚光
-----[フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)](2分)
以前の投稿 で、組込みシステムの世界では影の立役者である AMD Ryzen Embedded 8000 について説明しましたが、このパワフルなプロセッサーは、ハイパフォーマンス コンピューティングの世界で静かなウェーブを起こしています。 かつては気付かれていなかったこの技術が、今、注目されていることを嬉しく思います。 最近テキサス州オースティンで開催された Embedded World North America カンファレンスで、コンガテックは最先端の AMD Ryzen Embedded 8000 を搭載した conga-TCR8 モジュールを披露し、VDC Research の「Embeddy Award」を受賞しました。
Embedded World North America で表彰
今月初めにオースティンで開催された Embedded World North America は、組込みシステムおよびエッジ コンピューティング分野のプロフェッショナル向けの主要イベントです。 コンガテックの conga-TCR8 は、イベント参加者や業界の専門家の注目を集めました。 テクノロジー市場の大手調査会社であり、組込みテクノロジーの権威として高い評価を得ている VDC Research は、conga-TCR8 の卓越した革新性と業界への貢献を評価し、Embeddy Award を授与しました。 VDC Research は次のように述べています。
「このモジュールは、急速に成長するエッジ コンピューティングのハードウェア市場向けに、柔軟なカスタム コンピューティング ソリューションを開発するための、テクノロジーとソフトウェア サポートを独自に組み合わせていることを特徴としています。」
この表彰は、 aReady.COM バージョンの conga-TCR8 のパワフルな可能性を評価したものです。 この受賞は重要なマイルストーンであり、このモジュールが AI とエッジ コンピューティング テクノロジーに依存している業界を、いかに変革するかということを表しています。
conga-TCR8: エッジAI を先導
conga-TCR8 は、最大 8個の Zen 4 コアと XDNA NPU、Radeon RDNA 3 グラフィックスを搭載した Type 6 の COM Express Compact モジュールです。 これらを組み合わせることで、最大 39 TOPS の AIパフォーマンスを実現するこのモジュールは、医療用画像処理や試験と測定、POS システム、さらにはプロゲーミングなどの分野におけるゲームチェンジャーとなります。
conga-TCR8 が特に注目に値するのは、ソフトウェア ビルディング ブロックがプリインストールされたアプリケーションレディのソリューションである aReady.COM として利用できることです。 これには、ボッシュ ctrlX OS や RT Linux、Ubuntu などの検証済みオペレーティング システムのほか、ハイパーバイザーや IoT ソフトウェア パッケージが付属しています。 このアプローチにより、開発者は市場投入までの時間を短縮し、パフォーマンスを犠牲にすることなく柔軟性と効率性を実現することができます。
スポットライトの中へ
以前、私は AMD Ryzen Embedded 8000 シリーズが優れた技術であるにもかかわらず、見過ごされ続けるのではないかと懸念を表しました。 しかし、コンガテックの conga-TCR8 が Embeddy Award を受賞したことで、この技術のパワーがしっかりと認識されました。 もはや無名のヒーローではなく、次世代 AIアプリケーションにとって重要なコンポーネントとして認められたのです。
この賞は、エッジAI と組込みシステムのイノベーションがどのように進化するのか、そしてインテリジェントで効率的なコンピューティングに対する高まるニーズを満たすために性能が上がっていくのかを示しています。
しかし、この賞は単なる表彰ではありません。 エッジコンピューティングを推進することも目的としています。 アクセンチュアの調査によると、エッジで AIをフル活用している企業は、イノベーションや効率、費用対効果が劇的に向上しています。 conga-TCR8 は、これらのメリットを直接実現することができ、パフォーマンスやエネルギー効率、スケーラビリティの最適なバランスの組み合わせを提供します。
受賞歴のあるヒーローをアプリケーションに導入
開発者がこのテクノロジーをプロジェクトにインテグレーションするためのプロセスは単純です。 既存のシステムをアップデートする場合でも、新しい開発を始める場合でも、 コンピューター・オン・モジュール(COM)コンセプト を採用することで、インテグレーションが簡素化されます。 既に COM Express Compact モジュールを使用している場合、conga-TCR8 への移行は最小限の労力で済み、既存のモジュールを交換するだけです。 新規ユーザーの場合、aReady.COM コンフィグレーションがプラグ・アンド・プレイ環境を提供し、複雑さを軽減してプロジェクトを加速します。
結論
conga-TCR8 が Embedded World North America で賞を取ったことは、組込みシステム業界にとって大きな前進を意味します。 コンガテックが、AMD Ryzen Embedded 8000 シリーズにスポットライトがあたるようにしたことで、このプロセッサーを静かなヒーローから受賞歴のあるソリューションの主要コンポーネントへと変身させました。
投稿者:フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)
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-----[フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)](2分)
あなたは 1日でも、AIについて聞いたり読んだりしないようにしたことはありますか? 今日の世の中では、それはほとんど不可能です。 人工知能(AI)は至る所で使われ、エッジAIが組込みコンピューティングにおいて中心的な役割を果たしています。
エッジAI というのは、AIアルゴリズムを遠隔のデータセンターではなく、データの発生源であるデバイスやマシンなどで直接実行することです。 このアプローチには、ローカルでデータを処理することによる低レイテンシーと情報セキュリティの強化という明らかなアドバンテージがあります。 AIには大規模なサーバーが必要と思われがちですが、トレーニングをおこなうことと、推論を適用することを区別することが重要です。
すべての AIが同じではありません: トレーニングと推論の違い
AIのトレーニングには、大規模なデータセットを使用してモデルを作成することと、精度を高めることが含まれます。 このプロセスは膨大な計算量のためパワフルなハードウェアを要し、多くの場合、データセンターをまるごと必要とします。 そこで推論の出番です。 AIにおいて推論とは、トレーニング済みのモデルを使用して、新しい未知のデータから予測や決定をおこなうプロセスを指します。 大規模なデータセットを使ったトレーニングで、モデルはパターンを認識し、インプットを特定のアウトプットに変換することを学習します。 トレーニングが完了すると、モデルは新しいデータから結論を導き出すことができるようになりますが、多くの場合、はるかに性能の低いハードウェアで済みます。 そのため、推論にはSMARC モジュールのような低消費電力プラットフォームが適しています。
OpenVINO と重要な INT8
インテルの OpenVINO ツールキットは推論の効率を高めます。 OpenVINO は「Open Visual Inference and Neural Network Optimization」の略で、インテル ハードウェア上でディープラーニング モデルを最適化して実装するためのツールです。 これにより、開発者は推論のパフォーマンスを大幅に向上させるために、あらかじめトレーニング済みのモデルを使用して特定のアプリケーション向けにカスタマイズし、モデルを最適化することができます。
OpenVINO を使用する場合、ツールキットは複数のフォーマットをサポートしているため、開発者は遅かれ早かれさまざまなデータ タイプに遭遇することになります。 INT8 と FP32 の 2つの例では、精度とメモリー要件が異なります。
データタイプ |
精度のレンジ |
メモリー要件(バイト) |
INT8 |
-128 ~ 127 |
1 |
FP32 |
-3.4x1038 ~ 3.4x1038 |
4 |
INT8 がなぜ重要なのか
INT8は、計算効率と精度の最適なバランスを提供する点で特に重要です。 INT8 を使用するとメモリーの必要量が削減され、推論が高速化されるため、SMARC モジュールなどの低消費電力プラットフォームにとって特に有利になります。 INT8 量子化により、それほど精度を犠牲にすることなく、非常に高い推論パフォーマンスを実現できることがテストで実証されています。 インテルはこれを裏付けるテスト結果を公開しました。 それは 2021年のことでしたが、インテルは今、エッジAI アプリケーションにおける INT8 の重要性を強調しています。
新しい Intel AtomR x7000RE シリーズ プロセッサーは INT8 をネイティブでサポートしており、以前の x6000RE シリーズよりも大幅にパワフルになっています。 画像分類パフォーマンスが最大 9.83倍、向上しているというインテルの主張が、この改善の大きな影響を表しています。
出典: https://www.intel.com/content/www/us/en/products/details/embedded-processors/atom/atomx7000re.html
INT8 がネイティブ サポートされたことで、量子化モデルを最適に使用できるようになり、推論がより高速かつ効率的になります。 これにより、次のようなさまざまな産業分野の幅広いアプリケーションでの利用が可能になります。
・ 産業オートメーション: 生産ラインの制御と監視を改善
・ モーション コントロール: 機械とデバイスの制御がより正確で高速
・ 自律走行車
と
ロボット: 効率的なリアルタイム ナビゲーションと意思決定
・ 医療機器: 患者のモニタリングと実験室での試験の精度と信頼性が向上
・ 輸送管理: 道路と鉄道システムにおける車両管理と交通監視の最適化
すでに
SMARC モジュールを使用している場合には、モジュール コンセプトのおかげで、新しい x7000RE バージョンに簡単にアップグレードすることができます。
投稿者:フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)
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「いろいろなことが少し刺激的」:AMD Ryzen Embedded 8000はもっと注目されるべき
-----[フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)](2分)
組込みシステムに関して残念なことは、気づかれないことが多いということです。 しかし、これらの目に見えないヒーローは、現代の日常生活に重要な役割を果たしています。 自動販売機やレジシステム、医療機器には欠かせない存在です。 さらには、券売機、交通管制システム、超近代的な工業プラントの中にも隠れています。
AMD の新しい Ryzen Embedded 8000 も、組込みの世界で同じように気付かれないという運命を持っています。 今日の時点では無名のヒーローです。 しかしながら、このプロセッサーは将来的に、多くの組込みシステムを支える頭脳となることが期待されています。 それにもかかわらず、それに見合うだけの注目を集めてはいません。 AMD は、Embedded World 2024 直前の 2024年4月2日にコミュニティ ブログへの投稿で、本当にひっそりと、そしてついでにこれを発表しました。 トレードショーでは、この新しいプロセッサーはほとんど目立たず、AMDブースで Ryzen Embedded 8000 を見つけるためには、あらかじめ何を探すべきかを知っていなければなりませんでした。 さらに混乱を招いたのは、AMDの製品ページには BGAバージョンしか記載されていなかったのに、ショーではソケットタイプの Ryzen Embedded 8000 を展示したことです。 それでも、このプロセッサは AMDにとって、まさに「次の重要製品」なのです。
Zen モード: 強さは継続から生まれる
人気の AMD Ryzen Embedded V2000 の後継である Ryzen Embedded 8000 は、当然ながら大幅な改善が施されています。 しかし、だからといって AMD Ryzen Embedded V2000 が時代遅れになるわけではありません。 むしろその逆です! 4年前に発売されたこの製品は絶好調で、AMDによると少なくとも 2030年までは販売される予定です。 しかし、この 4年間で多くの技術的な進歩がありました。 V2000の Zen 2 コアは 7nm プロセスで製造されていますが、新しい Ryzen Embedded 8000 は効率的な 4nm アーキテクチャに基づく、より先進的な Zen 4 コアを採用しています。 これにより、同じ消費電力でより高いコンピューティング パフォーマンスが保証されます。 しかし、もちろんそれだけではありません。 キーワードは、エッジにおける AIです。
注目のテクノロジー
経営コンサルティング会社のアクセンチュアによる調査では、AIを使ったエッジ コンピューティングの重要性が強調されています。 エッジにおいて継続的に AIを使用している企業の場合、4倍は革新的で、効率は 9倍、コスト効率はほぼ 7倍高いという結論が出ています。 エッジにおける AIアクセラレーションは、専用 NPUを内蔵した AMD Ryzen Embedded 8000 シリーズが得意とする分野です。 AMD XDNA アーキテクチャーをベースとし、最大 16 TOPS を実現します。 Ryzen Embedded 8000 は、CPUと内蔵GPU を組み合わせて、最大 39 TOPS の AIパフォーマンスを提供し、革新性や効率性、生産性にとって重要な梃となります。
おそらく、Ryzen Embedded 8000 は、隠れたヒーローとしての影の存在から抜け出し、組込み AIアプリケーションのスポットライトを浴びるでしょう。 しかしながら、AIアプリケーションが認知されるようになっても、Ryzen Embedded 8000 は縁の下の力持ちであって、知られないままになるのではないかと懸念しています。 ここでも、組込みシステムと Ryzen Embedded 8000 の類似点が浮かび上がります。 どちらも、これからも沈黙のヒーローであり続けるでしょう。
アプリケーションにヒーローを投入
これは非常に残念なことです。 なぜなら、私の考えでは、AMD Ryzen Embedded 8000 には、最新かつパワフルで将来性のある AIエッジ アプリケーションに必要なすべての機能が搭載されているからです。 そしてパフォーマンスとエネルギー効率、複雑な AIタスクを処理する機能を兼ね備えています。
隠れていても、いなくても、ヒーローはヒーローです。 それでは、このヒーローをアプリケーションに取り入れるにはどうすればよいでしょうか。 コンピューター・オン・モジュールのコンセプトによって、新しい Ryzen Embedded 8000 を既存アプリケーションと新規開発の両方に比較的容易にインテグレーションすることができます。 COM Express Compact モジュールをすでに使用している場合は、AMD Ryzen Embedded 8000 プロセッサーを搭載した新しいモジュールに交換するだけで済みます。 コンピューター・オン・モジュールをまだ使用していない場合や、それが何なのか疑問に思っている方は、こちらの 解説ページ をご覧ください。 このページでは、コンピューター・オン・モジュールのコンセプトとそのアドバンテージ、さらに必要な情報についてすべて解説しています。
投稿者:フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)
フロリアン・ドリッテンターラー(Florian Drittenthaler)は、コンガテックのプロダクトライン マネージャーで、品質およびテクノロジー マネージメントの豊富な経験を持っています。 コンガテックに入社する前は、Zollner Elektronik AG でストラテジック テクノロジーおよび品質のマネージャーを、Lindner Group SE では国際品質マネージャーを務めていました。 工業工学の学士号とテクノロジーマネージメントの修士号を取得しており、現在はビジネス情報学の修士号取得を目指してさらに専門知識を広げています。 フロリアンは、アウトドア アクティビティを楽しむ技術愛好家で、VDIやVWI、GI などのドイツの専門家協会に参加しています。
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-----[クリスチャン・エダー(Christian Eder)](1分)
COM-HPC Mini はサイズが小さいため、適切な冷却インターフェースを定義する必要がありました。Mini は主に低消費電力の CPU をターゲットにしていますが、最適なパフォーマンスと信頼性を確保するためには、追加の冷却が必要です。
ヒートスプレッダーとスタックの高さ
サイズの縮小とともに、スタックしたときの全体の高さを下げるための改善が行われました。ヒートスプレッダーの高さは 10mm に削減されました(ヒートスプレッダーの上部からモジュール基板の下部まで)。COM-HPC Server の場合の高さは 18mm と規定されており、Client の場合は 15mm です。 サイズが重要な場合、この規定によってハイパフォーマンスでありながら、スリムなコンピューティング ソリューションを開発することができます。
COM-HPC Mini の高さ
COM-HPC Mini のヒートスプレッダー
ヒートスプレッダーの取り付け
冷却ソリューションとヒートスプレッダーは、異なる取り付け方向に対応するために、ネジ付きのスタンドオフとスルーホールのスタンドオフが用意されています。冷却ソリューションはモジュールの上部に取り付けられることが多く、その場合キャリアボードにはネジ付きのスタンドオフ、冷却ソリューションにはスルーホールのスタンドオフが必要です。逆に、ヒートスプレッダーは、別の 3.2mm の取り付け穴を使用してシャーシに固定されることがよくあります。 この場合、通常モジュールとキャリアボードを組み合わせたものを、すでに固定されているヒートスプレッダーに取り付けます。このとき、ヒートスプレッダーはネジ付きスタンドオフにし、キャリアボードのスタンドオフはスルーホール バージョンにすることで、適切に取り付けることができます。
ヒートスプレッダーのネジが切られたバージョンを使用した底面からの取付けでは、キャリアボードにネジの切られていないスタンドオフが必要です。
ヒートスプレッダーのネジの切られていないバージョンを使用した上面からの取付けでは、キャリアボードにネジが切られたスタンドオフが必要です。
投稿者:クリスチャン・エダー(Christian Eder)
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-----[ティム・ヘンリヒス(Tim Henrichs)](2分)
プロセス業界で 20年以上働いた後、私は組込みコミュニティに転向しました。 この変化は、スティングが歌った「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」のように、「組込みのプロセスエンジニア」といった感じでした。 私は20年以上にわたり、フィールドバスや予知保全、インダストリー 4.0、モジュール式自動化、安全性とセキュリティ、AI などに深く関わっていました。
今、私は組込みコンピューティング市場において同じトピックに遭遇しましたが、それは非常に基本的な技術レベルであり、そしてまったく新しい視点からでした。 不慣れな課題や技術、およびユースケースが私を待ち受けていました。 経験豊富な電気技師であるにもかかわらず、私が知っているすべてが突然違って見えました。 以前はアプリケーションに重点を置いていましたが、今の中心はすべてのソリューションの基礎である コンピューター・オン・モジュール です。
この組込みの世界では、まったく異なるテクノロジーと専門用語を扱う必要がありました。 以前はシステム アーキテクチャーやプロセスプラントの信号量、プロセスステーション/制御システムのサイクルタイム、プラント サプライチェーンのネットワーク化に重点を置いていましたが、現在はプロセッサー アーキテクチャーや COM フォームファクター、クラウド接続、AI ワークロード用のプロセッサーの TOPS(Tera Operations Per Second、1秒間に何兆回の演算を実行できるかを示す数値)に関する議論に携わっています。
コミュニティでは、こうした基本的なトピックのほか、セキュリティや機能安全、システム統合、リアルタイム機能など、重要なテクノロジーに関する深い知識が欠けている場合がよくあるということにすぐに気付きました。 多くの用語は単によく知られていませんでした。 学ぶべきことはたくさんあり、この経験から、コミュニティと基本的な知識を共有することの重要性を認識しました。 テクノロジーを理解するだけでなく、それがどういうものなのか、なぜ必要なのか、そして最も重要なことは、その目的を理解することです。
そして、このような基礎知識を共有するのにブログよりも適したプラットフォームは何か? これがこのブログの最初のトピックです。
ブログとは?
電子機器や GPS が登場する前は、船の速度は丸太を使って測定されていました。 この丸太には、一定の間隔で結び目(ノット)がついたロープが取り付けられていました。 丸太が水に浮かんでいて、船が一定時間に通過したノットの数によって、速度がノットという単位で表されました。 これは、航海日誌と呼ばれるものに気象状況や重要な出来事、特別な出来事とともに記録されました。 この習慣は今も続いています。 (b)log(ブログ)も同様の機能を果たします。 つまり、すべての重要な情報を簡潔に提示します。 では、この単語の先頭の「b」はどこから来ているのでしょうか? おそらくすでにお分かりでしょうが、「ウェブ(web)」から来ています。ウェブではすべてが短縮されるため、この用語は「ウェブログ(weblog)」から派生したものです。
これこそが、私たちが目指すところです。 組込みコンピューティングの海を旅する中で得た重要なトピックを記録して皆さんと共有し、 組込みコンピューティング技術 の最新動向を常にお伝えすることです。 定期的に ブログ にアクセスして、この時代のメガトレンドへの旅にご参加ください。
ティム・ヘンリックス氏は、コンガテックのグローバルマーケティングおよび事業開発担当副社長です。 ティム・ヘンリックス氏は、2022年末よりコンガテックのグローバルマーケティングおよび事業開発責任者を務めています。コンガテックに入社する前は、20年以上にわたりプロセスオートメーションに携わり、アプリケーションエンジニア、リードエンジニア、製品マネージャー、事業開発マネージャーなどの役職を歴任しました。また、地域および垂直マーケティングマネージャーとしてさまざまな役職を歴任しました。2011年から2016年にかけて、化学および医薬品の欧州センターオブエクセレンスを設立、発展させました。横河グループのヨーロッパマーケティングディレクターとして、デジタルマーケティングとマーケティングエクセレンスを担当しました。ティム・ヘンリックス氏は電気技師であり、マーケティング管理のディプロマを取得しています。
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-----[ゼリコ・ロンカリッチ(Zeljko Loncaric)](2分)
エッジサーバーのトピックを扱い始めてからは、サイバーセキュリティ関連のレポートに敏感になりました。 そして、状況は緊迫しており、脅威は絶えず増大していると言わざるを得ません。 ここにいくつかの例を挙げます。2022年には、毎日 38万の新しいウイルスの亜種が検出されました。 産業分野やクリティカルなインフラストラクチャーに対するサイバー攻撃は、2022年に驚くことに 140%も増加しました。 そして、防御できない攻撃は、計り知れないリスクと経済的損失につながる可能性があります。
セキュリティ、セキュリティ、セキュリティ
たとえば、ランサムウェアの攻撃を受けた場合、ダウンタイムは約136営業時間です。 これは、1日8時間として、17営業日に相当します。 したがって、セキュリティがあらゆるレベルで最も重要な基準になるのは当然のことです。 特にクリティカルなインフラストラクチャーではそうです。つまり IoTには良い面と悪い面があります。 なぜならば、IoT接続することによって、過酷な環境の現場において対処しなければならない、まったく新しい攻撃方法が自然に生成されるためです。
もちろん、企業が独自のサイバーセキュリティ戦略を実装する明確な方法を正確に規定することはできませんが、それが機能する必要があります。そのためには、現場にパワフルなセキュリティ エッジサーバーが必要です。 しかしながら、これらの「ウォッチドッグ」は、空調が完備されたデータセンター内の従来のサーバーとはまったく異なる方法で実装する必要があります。ダウンタイムは許されません。
ダウンタイムのリスクを最小限に抑える
しかし、ダウンタイムのリスクはどこにでも潜んでいます。たとえ一度のダウンタイムでも、企業の存続を深刻に脅かす可能性があります。 したがって、過酷な環境での信頼性はサイバーセキュリティにとって重要であり、これには物理的に安全な機構設計も必要です。サーバーを密閉して、ほこりや湿気の侵入を防ぐことができる、ファンによる換気をおこなわないパッシブヒートパイプ冷却用の厚い冷却フィンを実装した堅牢なハウジングから、衝撃や振動に耐えられるコネクタやねじ継手まで、保護されたデータセンターではなく現場においてパワフルなサーバー技術を安全に運用するためには、考慮すべき点が数多くあります。堅牢な設計に加えて、最も厳しい条件下で使用するために、24時間365日稼働で 10年以上使用できることや、継続的な運用に関しての信頼性など、安全性に関連するその他の特長についても言及する必要があります。
優れたものを基にして標準規格を活用する
これらの要件を効果的に満足する 1つの方法は、COM-HPC Server などのオープンなサーバー・オン・モジュール規格に基づいたモジュラー設計をおこなうことです。これらの新しいモジュールは、確立された規格と製品、たとえば新しい インテル Xeon D-2800 プロセッサーなどを基に構築されています。そのため、セキュリティ レベルを大幅に向上させる、インテル ブートガードやインテル トータル・メモリー・エンクリィプションなどのパワフルなサイバーセキュリティ機能が提供されます。インテル ブートガードは信頼できるファームウェアのみが起動されるようにし、トータル・メモリー・エンクリィプションはメイン メモリー全体を不正アクセスから保護します。これらのプロセッサーは高いコンピューティング能力とエネルギー効率も提供し、高度な暗号化と高速なリアルタイム データ分析が求められるエッジ コンピューティング環境に最適です。インテル ソフトウェア・ガード・エクステンションズ(SGX)により、機密データの保護がさらに強化されます。 そのうえ、付随するサービスやソフトウェア、開発者サポートなどの巨大なエコシステムがすでに存在しています。
進化する市場に対する産業用エッジサーバーの適応
製造やエネルギー、スマートシティなどの分野でデータ処理が急増しており、エッジサーバーの市場が活況を呈しています。 Global Market Insights によると、2025年までにエッジ コンピューティング ソリューションは、これにより 290億ドルのビジネス チャンスが生まれると予想されています。 この成長曲線に便乗する方法については、コンガテックのホワイトペーパーをご覧ください。
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モジュラーコンセプトは、新しいセキュリティ機能を備えた迅速な技術開発のためのシームレスなアップグレードを可能にする 「次世代への適応」 戦略も提供します。 より高いパフォーマンス、あるいはプロセッサーに統合された新しいセキュリティ機能が必要な場合には、モジュールを交換するだけです。残りのハードウェアはそのまま使用することができます。 完全にクローズドなシステムでも使用することができます。
詳細については、私のホワイトペーパー「 産業エッジにおけるサイバーセキュリティ対策 」をご覧ください。
投稿者:ゼリコ・ロンカリッチ(Zeljko Loncaric)
ゼリコ・ロンカリッチは、インフラストラクチャーのマーケット セグメント マネージャーです。 ゼリコは、組込みコンピューティングとコンピューター・オン・モジュールの分野で長年の経験があります。2010年にコンガテックに入社する前は、ドイツとオーストラリアの国際企業でプロダクト マネージメントやマーケティング、セールスマーケティングなどのさまざまな役職を歴任しました。ゼリコは、デッゲンドルフ大学(University of Deggendorf)で経営管理の MBA とメディアテクノロジーの学位を取得しており、ボッシュでトレーニングを受けた電子技術者でもあります。 初期スタートアップ段階における改善された製品とサービスソリューションの調査への注力は、科学博士号の中核でもあります。この研究は、革新的なテクノロジー分野のスタートアップと、実験的なイノベーション手法に関するものです。
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-----[マクシミリアン・ガッスル(Maximilian Gerstl](2分)
Google の DeepMind AI が ATARI ゲームに勝利し、子供の頃に誰もが試した攻略法を発見するのを見たときのことを、私は鮮明に覚えています。 この画期的な躍進の後、彼らのチームは驚くべきことに、世界有数のプロ囲碁棋士の 1人である イ・セドル(Lee Sedol)に勝利しました。 囲碁は、チェスとは異なり、その広大な探索空間のため、優れたヒューリスティックス(発見的手法)のアルゴリズムでは解くことができないゲームです。 その代わりに、実際の学習による直感と人間のような知性が必要です。
->AlphaGo のドキュメンタリーを見ることを強くお勧めします <-
これらはすべて数年前のことです。 それ以来、AI は研究論文からコンシューマー分野での実際の応用へと急速に進歩しましたが、最も生産的で有益だったのは医療分野です。 ここでは、開発者はボードゲームをプレイするためではなく、医療画像を補い診断を支援するために機械をトレーニングします。
AI が医療用画像処理を刷新
医療業界は AIのおかげで大きな技術的飛躍を遂げています。 現時点では汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)は非現実的で程遠いですが、医療分野では、X線や MRI、モバイル超音波診断装置などの医療用画像処理において、AIの補助による診断が、いち早く導入されています。
AI は MRI 装置内に患者が入っている時間を短縮するために画像を再構成でき、医療専門家が画像を見る前に解像度を高めることができます。 より短時間で鮮明な画像が得られるということは、より多くの患者をスキャンできるだけでなく、医療専門家が診断を下しやすくなることを意味します。
もう 1つのユースケースは、診断プロセス自体の改善です。 医療専門家が複雑な超音波画像や MRI画像から適切な診断を導き出すには、何時間ものトレーニングが必要です。 AIは、人間が一生かけても見きれないほどの量のデータを使ってトレーニングします。 そして、トレーニングに終わりはありません。 とは言っても、診断を完全に機械まかせにするわけではありません。 AIの役割は、画像の補正と事前フィルタリング、および画像データに対する専門家の診断意見の確認です。 AI が 「この画像のこの影を見てください。これは腫瘍でしょうか?」 と言うところを想像してみてください。 これが私たちがすでに生活している現実の世界なのです。
x86コア + グラフィックスコア + AIコア = インテル Core
AI推論を広く利用できるようにするために、ますます多くのシリコン ベンダーが、強化された AI機能をコンピューティング エンジンに組み込んだ、製品ポートフォリオにシフトしています。 最初の世代のインテル Core Ultra プロセッサーを例に挙げると、このプロセッサーには、ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)や、効率の高いエッジ AI推論アクセラレーター、非常にパワフルなグラフィックスが内蔵され、GPGPUパフォーマンスも強化されており、そして 10年間供給されます。 詳しくいうと、 Meteor Lake プロセッサーの新しい NPUは、機械学習アルゴリズム と AI推論を x86命令セットよりも約20倍の電力効率で実行します。 また、NPUパフォーマンスはディスクリートGPUのレベルに達しており、1.9倍高速なグラフィックスや GPGPU処理により、前世代の インテル Core と比較して、より詳細で没入感のあるユーザー エクスペリエンスを実現します。
古い COM を外す + 新しい COM を実装 = AI機能の追加
標準化されたコンピューター・オン・モジュール(COM)の一番良い点は、COM Express を使用した場合は特に、既存の設計を変更することなく、新しい AI機能を容易に実装することができることです。 まさにこれが、急速に進化するマーケットの業界において、製品の設計に COMが使用される理由です。 COM とキャリアボードの組み合わせによるソリューションの柔軟性によって、設計者はAIのトレンドとそのユースケースの進化にともない、2つの簡単な手順で、高まるコンピューティング性能へのニーズに合わせて自由に製品を適応させることができます。 以前のモジュールを取り外し、新しいモジュールを差し込むだけで、準備完了です。
これにより、多くの場合、外付けの AIアクセラレーション カードをインテグレーションする必要がなくなるため、アプリケーションの総所有コストが削減されます。
conga-TC700 COM Express Compact のような標準化されたコンピューター・オン・モジュールは、最新の AI機能で医療アプリケーションをアップグレードするための理想的なプラットフォームです。
詳細はこちらのリンクをご覧ください:
https://www.congatec.com/jp/products/com-express-type-6/conga-tc700/
結論
AI は、専門家でも見逃す可能性のあるパターンや異常を見つけるのに優れています。 医療専門家は、しばしば大きなプレッシャーにさらされています。 診断を迅速化し、重要な箇所に注意を集中できることは、非常に役立ちます。 私は、調子の悪い指の MRI画像を 3人の医師に見せ、3 つの異なる意見をもらったときに、このことに気づきました。 そのため、私は個人的に、このテクノロジーに前向きです。 あなたはどうですか?
NPUを内蔵したインテル Core Ultra テクノロジーのアドバンテージの詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。
https://www.congatec.com/jp/technologies/intel-meteor-lake-h-based-computer-on-modules/
投稿者:マクシミリアン・ガッスル(Maximilian Gerstl)
マクシミリアン・ガッスル(Maximilian Gerstl)は、コンガテックのプロダクトライン マネージャーで、組込み業界で 10年近くの経験を持っています。 過去には、コンガテックのフィールド アプリケーション エンジニアや Kontron のハードウェア 設計をおこなっていた経歴を持っています。 マクシミリアンは、電気工学および情報工学の学士号(B.Eng.)と応用研究の修士号(M.Sc.)を取得しています。 ハードウェア設計の豊富な経験と業界に関する深い知識により、組込みコンピューティング分野では信頼できる人物です。 将来の製品について考えていないときには、ギターを弾いたりハイキングをするのが趣味です。
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#003: コンピューター・オン・モジュール規格のパワーとフレキシビリティーの解説: 包括的な概要
-----[クリスチャン・エダー(Christian Eder)](5分)
常に進化を続ける組込みコンピューティングの分野では、スケーラビリティー、相互運用性、設計の柔軟性を促進するために、コンピューター・オン・モジュール(COM)規格を採用することが極めて重要です。 代表的な規格には、ETX、XTX、Qseven、SMARC、COM Express、そして最新の COM-HPC があります。 この記事では、COM規格の世界を探求し、そのアドバンテージを明らかにして、組込みシステム業界にどのような革命をもたらすかを探ります。
私はオープン スタンダードの強力な信奉者です。 私の意見を裏付けている、古いですが今でも真実である言葉は、「車輪を再発明するな」 というものです。 この事実を組込みコンピューティングの世界に当てはめた結果が、コンピューター モジュールのオープン スタンダード化です。
私は長年マーケティングに携わっているエレクトロニクス エンジニアです。 マーケティングの伝統的な考え方の 1つは、「自社製品の独自性は何か」 というものです。 1999年に社内で激しい議論が交わされた後、中規模の組込みコンピューター会社であった Jumptec の出した結論は、自社のコンピューター・オン・モジュールはサードパーティ ベンダーの製品と互換性がなければならないというものでした。 これにより、新しい市場セグメントが生まれます。 25年経った今日、私はこれがまさに正しい決定であったことを認めざるを得ません。 コンピューター・オン・モジュールの世界市場は、すでに年間 10億ドルの水準を超えており、急成長を続けています。
ETX (Embedded Technology eXtended)
ETXは、最も初期の COM規格の 1つです。 寸法やコネクタ、ピン配列が標準化されたコンパクトなフォームファクターを定義しており、簡単に交換できるようにしています。 ETXモジュールは、プロセッサーやメモリー、必須の I/O インターフェースなど、コンピューターのコア コンポーネントをカプセル化します。 このモジュラー アプローチにより、シームレスなアップグレードが可能になり、メンテナンスが簡素化され、組込みソリューションの市場投入までの時間が短縮されます。 実際に、ETXは最初のオープン スタンダードのコンピューター・オン・モジュール規格でした。 Jumptec が最初の仕様を作成し、その後に業界コンソーシアムによってホストされました。 最初に ETXモジュールを提供した企業は Jumptec、Advantech、I-Base、IBR、PCI-Systems です。 同時期に定義された UTX や STX など、他のモジュールもありましたが、これらはすべて独自のものでした。 ETXは 25年前に定義されましたが、現在も使用されており、一部のモジュールはまだ市場で入手可能です。 古い設計のキャリアボードは、新しいモジュールと一緒に引き続き使用されています。 これは、COMが組込み設計の寿命を延ばすことを明確に証明しています。
XTX (eXtended Technology eXtended)
ETXから XTXで拡張されたインターフェースは、時代遅れとなった ISAバス(1980年代初頭に IBM によって定義された)が、はるかに高速な PCI Express レーンと SATAインターフェースによって置き換えられたことです。 実際、XTXは ETX規格の単なる拡張です。 XTXを使用すると、最小限のキャリアボードの再設計作業で、はるかに高い I/O、およびデータ ストレージ パフォーマンスにアップグレードすることができます。
XTX の定義は、2005年に新興企業のコンガテックが初めて取り組んだ活動でした。 ETX モジュールを提供していたほとんどのモジュール ベンダーは、自社の製品ポートフォリオを XTXにアップグレードしました。
Qseven
2008年、CPUの消費電力が低減されたことで、より小型のオープン スタンダードが求められるようになりました。 コンガテックは、Seco社、後には MSC社と共同で、堅牢でありながらコスト効率に優れた MXM2コネクタをベースにした コンパクトな 7x7cm サイズのモジュール の定義を開始しました。 この仕様は業界のコンソーシアムによってホストされました。 仕様の PICMG への移管が、主に政治的な問題により失敗したため、2012年3月に新しいコンソーシアムの SGETが設立され、理事に選出されました。 2012年以来、私は SGETの理事会に所属し、会計や副議長、会長など、さまざまな役職を務めています。
SMARC モジュール
Smart Mobility ARChitecture の略称である SMARC モジュール は、モビリティを優先しているため、ポータブル デバイスや消費電力の制約があるデバイスを使ったアプリケーションに最適です。 SMARCは、省電力で小さなフットプリントを定義しているため、バッテリー駆動やエネルギー効率が高い組込みシステムに適しています。 標準化されたコネクタとインターフェースを備えた SMARC モジュールは、互換性を維持しながら設計の柔軟性を高めます。
SMARC は、2つのベンダーのみがサポートしていた Armプロセッサー向けのモジュール規格である ULP-COM として始まりました。 その大きな成功により、規格は SGETに移管され、リビジョン 2.0 がリリースされました。 私は規格のエディターとしての役割で、ワークグループを将来を見据えた方向に向けることができ、その結果、非常に成功した規格が生まれました。
COM Express
現在、 COM Express は最も成功したオープン スタンダードの COM規格です。 最初の COM Express 規格は 2005年に公開されました。 それ以来、2つのメジャーなアップデートがおこなわれました。 Rev. 2.x では、新しい Type 6 ピン配列と、Mini Size の Type 10 ピン配列が追加されました。 Rev. 3.x では、ヘッドレスのハイパフォーマンス サーバー アプリケーションにも対応できるように、サーバー向けピン配列の Type 7 が定義されました。
2010年8月にリリースされた Rev 2.0 以降、私はすべての規格書のエディターを務めました。 これには、ハードウェア規格 Rev. 2.0、2.1、3.0、3.1 の他、EEPROM、Embedded API、キャリアボード設計ガイドなどのドキュメントも含まれます。 オープン スタンダードに対する私の信念により、この仕様作成に多大な労力を注ぎ込むことができました。 この素晴らしい国際的な成功への協力者の 1人であることを誇りに思います。
COM-HPC
COM-HPC は COM Express の後継として位置づけられています。 プロセッサーは急速に進化しており、コンピューター・オン・モジュールの定義もこの流れに追従する必要があります。 COM-HPC を採用する理由はパフォーマンスです。 コンピューティング パフォーマンスだけでなく、I/Oパフォーマンスも重要です。
私はこの規格に、最初から関わっていました。 コンガテック社内での最初のブレイン ストーミングから始まり、2018年にニュルンベルクで開催された Embedded World で Adlink および Kontron との最初の議論を経て、2018年10月に PICMG ワークグループの議長に選出されました。 それ以来、毎週電話会議がおこなわれ、ピーク時には並行して2つのワーキング サブグループを立ち上げました。 1つはすべてシグナル インテグリティに関するもので、もう 1つはプラットフォーム マネージメントに関するものです。 COM-HPC 規格は、単なる 1つのドキュメントではありません。
・ ハードウェア規格 Rev. 1.2(237ページ)
・ プレビュー規格 Rev. 1.2(50ページ)
・ Embedded API Rev. 1.0(約50ページ)
・ キャリアボード設計ガイド Rev. 2.2(163ページ)
・ プラットフォーム マネージメント インターフェース規格(94ページ)
・ COM-HPC 用 Embedded EEPROM 規格 Rev. 1.0(139ページ)
これらは 700ページを超えるドキュメントですが、心配しないでください。 そのほとんどは、モジュールを設計する企業にのみ関係します。 キャリアボード設計ガイドは、独自のキャリアボードを製作する予定がある場合に参照する最も重要なドキュメントです。
COM-HPC は将来を見据えた規格であり、将来に対応できるような方法で定義され、非常によくできたドキュメントです。 ワークグループの議長であり、いくつかのドキュメントの共同エディターである私は、この結果を誇りに思っています。 これは、すべてのワークグループ メンバー個々人の献身によって実現しました。 そして、すでに COM-HPC が成功裏にリリースされたことを知っています。 これは、「車輪の再発明」を不要にするさらなる大きな一歩です。
COM規格のアドバンテージ:
スケーラビリティー
COM規格により、システム全体を再設計することなく、個々のモジュールを簡単にアップグレードできるため、スケーラブルなソリューションが可能になります。 この柔軟性は、進化する技術要件に対応するために不可欠です。
相互運用性
標準化されたコネクタとインターフェースにより、異なるメーカーのモジュールとシステム間の相互運用性が確保されます。 この互換性により、インテグレーションのプロセスが簡素化され、互換性のあるさまざまなコンポーネントのエコシステムが広がります。
市場投入までの時間
COM規格のモジュール性により、製品開発サイクルが加速します。 設計者はコア コンポーネントの複雑さを気にすることなく特定の機能に集中できるため、新しい組込みソリューションの市場投入までの時間が短縮されます。
将来に対応
COM規格の継続的な進化により、組込みシステムは最新のテクノロジーに対応し、適応性を維持することができます。 新しい標準である COM-HPC は、次世代アプリケーションにおけるハイパフォーマンス コンピューティングへの道を開きます。
コスト
コア コンポーネントを標準化されたモジュールとして分離することで、装置メーカーは製造コストを最適化し、無駄を減らし、メンテナンス プロセスを合理化することができます。 その結果、さまざまな組込みアプリケーションにおいて、コスト効率の高いソリューションを実現することができます。
結論
ダイナミックな組込みコンピューティングの世界では、コンピューター・オン・モジュールの使用が不可欠になっています。 基礎となった ETX や XTXから、電力効率に優れた Qseven やSMARC、多用途の COM Express、最先端の COM-HPC まで、これらの規格は業界の多様なニーズを満たす、さまざまなオプションを提供します。 スケーラビリティー、相互運用性、市場投入までの時間の短縮、将来性、コスト効率などのアドバンテージにより、COM規格は組込みシステムの進化の原動力として位置付けられ、革新の新しい時代へと導きます。
投稿者:クリスチャン・エダー(Christian Eder)
前の投稿 > #002: COM-HPC Mini - パート2:ピン配列
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#002: COM-HPC Mini - パート2:ピン配列
-----[クリスチャン・エダー(Christian Eder)](1分)
前回のブログで説明したように、COM-HPC 規格では、現在、より小さな COM-HPC Mini サイズが定義されています。 小型化するためのトレードオフは、400ピン コネクタを1つにすることで、これは COM-HPC Client のピン数の半分になります。 Miniのピン配列は、低消費電力の仕様で最大限のインターフェースを確保できるように調整されました。
Mini ピン配列
COM-HPC Mini は COM Express Type 6 に比べてピン数が少ないにもかかわらず、USB4 や SoundWire などの最新の I/O を含む豊富な機能セットを誇ります。 また、より多くのイーサネット ポートを提供し、2つの NBaseT と 2つの RGMII を PCIe レーンと共有します。 大容量ストレージ デバイスを接続するために、従来からの SATA インターフェースも引き続きサポートされ、PCIe レーンを共有します。 しかしながら、ほとんどのアプリケーションでは、専用の PCIe レーンを介してはるかに高速な NVME インターフェースが使用されると考えられます。
ピンを節約しながら最大限の柔軟性を実現するために、8つのハイスピード データレーンを DDI(デジタル・ディスプレイ・インターフェース)、USB 3.x、および USB4 で共有します。 仕様書では、最大限の相互運用性を実現するために、以下に示す共有の組合わせが標準として定義されています。
SS Lanes |
Config 1 |
Config 2 |
Config 3 |
Config 4 |
Config 5 |
SS Lane 0 |
1st DDI |
1st DDI |
1st DDI |
3rd USB4 |
3rd USB4 |
SS Lane 1 |
|||||
SS Lane 2 |
2nd DDI |
1st USB4 |
1st USB4 |
1st USB4 |
1st USB4 |
SS Lane 3 |
|||||
SS Lane 4 |
4th USB 3.x |
4th USB 3.x |
2nd USB4 |
2nd USB4 |
2nd USB4 |
SS Lane 5 |
3rd USB 3.x |
3rd USB 3.x |
|||
SS Lane 6 |
2nd USB 3.x |
2nd USB 3.x |
2nd USB 3.x |
2nd USB 3.x |
4th USB4 |
SS Lane 7 |
1st USB 3.x |
1st USB 3.x |
1st USB 3.x |
1st USB 3.x |
次の投稿では、COM-HPC Mini 向けに最適化された冷却ソリューションについて解説します。 どうぞお楽しみに...
投稿者:クリスチャン・エダー(Christian Eder)
前の投稿 > #001: COM-HPC Mini - パート1:サイズ
次の投稿 > #003: コンピューター・オン・モジュール規格のパワーとフレキシビリティーの解説: 包括的な概要
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-----[クリスチャン・エダー(Christian Eder)](2分)
2023年10月3日に COM-HPC ハードウェア規格 1.2 がリリースされ、スモール・フォーム・ファクター モジュールの COM-HPC Mini が定義されるという、大きな変更がもたらされました。 サイズが小さいということのほかに、1つのコネクタに最も重要な機能を統合した、新しいピン配列が導入されています。
モジュール コネクタ自体も新しくなり、機構的にさらに堅牢で、データ スループットのパフォーマンスも向上しています。
PICMGワーキンググループは、2022年7月から「Mini」仕様についての活動を開始しました。 平均13人の参加者による 58回の電話会議を経て、2023年10月に規格がリリースされました。 ハードウェア規格の変更を反映した、キャリアボード設計ガイドの改訂版が2024年2月24日にリリースされました。 最も重要なアップデート内容である、サイズの定義から見てみましょう。
Mini サイズ
COM-HPC Mini は、広範な COM-HPC エコシステムの中で、スモール・フォーム・ファクターのコンピューター・オン・モジュール(COM)規格です。 COM-HPC(コンピューター・オン・モジュール ハイパフォーマンス コンピューティング)規格は、ハイパフォーマンスの組込みコンピューティング システムを構築するための、オープンなモジュラー プラットフォームです。 非常に小型化された 95 x 70 mm の形状でハイパフォーマンスを実現するように設計された COM-HPC Mini は、これまで大きなフォームファクターでは対応できなかったアプリケーションでも、COM-HPC Client の機能を利用することができるようになります。 それには、ビルオートメーション/産業オートメーション制御キャビネット用の DIN レール PC のような小型デバイスの中のハイエンド組込みロジックや、ポータブルの試験・計測機器など、スペースと電力の制約があるアプリケーションが含まれます。
COM-HPC Mini の仕様は、大きな形状の COM-HPC Client や Server の仕様とは、いくつかの重要な点で異なっています。 最も重要な変更の 1つは、2個のハイスピード コネクタではなく 1つのハイスピード コネクタを使用することです。 これにより、インターフェースに若干の変更が必要になりました。 その結果、COM-HPC Mini モジュールは、 Client および Server 仕様と互換性がありません。
COM-HPC Mini は信号ピンの数が半分であるにもかかわらず、400の信号レーンを提供し、これは COM Express Type 6 モジュールの 90%に相当します。
もう 1つの違いは、 COM-HPC Mini モジュールでは、メモリーを直付けする必要があることです。 この設計方式により、モジュールの衝撃や振動に対する耐性が高まり堅牢性が増すため効果的です。
COM-HPC Mini フォームファクターを正式に導入した COM-HPC 1.2 規格は 2023年 10月まで承認されませんでしたが、COM-HPC Mini のピン配列と寸法は 2022年12月にはすでに確定していたため、PICMG メンバーは準拠モジュールの設計を開始することができました。
COM-HPC Mini は、COM Express Mini など他のスモール・フォーム・ファクター規格の代替ではないことに注意してください。 それよりはスモール・フォーム・ファクターで高いパフォーマンスが必要な、進化するアプリケーションのニーズに対応するための、補完的な規格と考える必要があります。
投稿者:クリスチャン・エダー(Christian Eder)
クリスチャン・エダー(Christian Eder)は、コンガテックの共同創設者であり、マーケット インテリジェンス担当ディレクターを務めています。 組込みコンピューティングの分野で 30年の経験を持つクリスチャンは、PICMGの COM-HPCワークグループの議長を務めています。 また、PICMGにおいて他の多くのワーキンググループでも活動しており、COM Express 2.0、COM Express 2.1、COM Express 設計ガイド、Embedded EEPROM、Embedded EAPI、COM Express 3.0 などの規格のエディターも務めています。 クリスチャンは SGETの理事でもあり、SMARC 2.0 および 2.1 規格のエディターでもあります。 クリスチャンは、ドイツ、レーゲンスブルクの応用科学大学(University of Applied Sciences in Regensburg)で電気工学の学位を取得しています。
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コンガテックについて
コンガテック(congatec)は、標準フォームファクターの COM-HPC、COM Express、Qseven、SMARC などの産業用コンピューターモジュール、およびシングル・ボード・コンピューター(SBC)の設計開発・製造・販売をおこなうドイツに本社を置くメーカーです。これらの製品は、堅牢で長期供給が可能で、産業オートメーション、医療、エンターテインメント、輸送、テレコミュニケーション、試験と計測、POS など、さまざまな産業分野で使用することができます。製品には独自の拡張BIOS機能と、包括的なドライバーやボード・サポート・パッケージ(BSP)が含まれています。ニーズに合わせて製品のカスタマイズなどもおこなっています。 詳細については、コンガテックのウェブサイト https://www.congatec.com/jp/ をご覧ください。
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