産業用エッジコンピューティングのパフォーマンスを強化
●組込みコンピューティングはさらなる高みへ
エッジコンピューティングに高い演算能力と大量のデータ処理を求める声が爆発的に高まっています。こうした新たな需要は、COM Express規格によってカバーできる限界に達しています。そのため、コンガテックやIntelを含む25社以上の産業用コンピュータ関連企業で組織された団体(PICMG)を通じて協力し、より高性能なコンピュータ・オン・モジュール(COM)の新しいオープンスタンダードを策定しています。COM-HPCはその最新の成果です。
●ハイパフォーマンス規格に最適なエンジン
COM-HPC規格では、データ量、速度、I/O、メモリー容量が飛躍的に高まりました。例えば、COM-HPCクライアント仕様は、たった95x120mmのモジュールで最大49のPCIeレーンをサポートします。こうしたスペックはPICMGの作業グループが2018年に立ち上がった当時の技術では対応できない将来のテクノロジーに過ぎませんでした。しかし、第11世代Intel Coreプロセッサの登場により、COM-HPCに最大の能力を発揮させるCPUを入手できるようになりました。
●データを大量処理するエッジAIに最適化された大容量かつ柔軟なレーン
エッジデバイス間で交信されるデータ量は膨大です。
FAに使用される演算システムは、他の機器や、搬送・視覚処理システム等と通信するため、データ生成および通信が各装置間で行われます。一方、リアルタイム制御インフラと各種クラウドサービスとの間をシームレスに接続するため、データはゲートウェイ、エッジサーバや現在普及が進むリアルタイム・フォグ・サーバ間で通信されます。
こうした必須タスク以外にも、ビッグデータ解析と予測メンテナンスの実行、デジタルユーザーガイドの配布、カスタムヘルプデスクのサポートなどの全てを、単一モジュール上の単一CPUで対応する必要があります。
これら膨大な情報量を処理するため、コンガテックのCOM-HPCは第11世代IntelCoreプロセッサのレーンとI/Oをフル活用します。モジュールはデータを大量に扱うセンサー、入力、ワークロードをサポートしつつ、ローカルのシステムやコントローラ、エッジサーバ、クラウドのリソースへ複数のネットワークパスを提供しなければなりません。
●過酷な工場環境下でも頑強
IoT用に機能強化された第11世代Intel Core CPUは、組込み用と産業用に設計されています。コンガテックのモジュールは定評ある信頼性を備えたまま小型フォームファクタのコンピュータを形成し、過酷な環境にも耐えることができます。
●専用のボードコンピュータ
コンガテックは、x86コアアーキテクチャと主要な組込み機能とを完全に分離するため、オンボードのマイクロコントローラを搭載しています。システム監視、マルチステージウォッチドッグ、I2Cバスが独立して動作するため、組込み機能のパフォーマンスが向上し、システム全体の信頼性も向上します。
●グラフィックスとビデオのパフォーマンスの向上
4Kビデオや高フレームレートは、産業用コンピューティングには必要ない機能と思えるかもしれません。しかし、ヘルスケア分野では画像処理やグラフィックス性能が製品採用の可否となる場合もあります。デジタルX線撮影や超音波診断などの医療用モバイル画像処理は、産業グレードで24時間稼働のワークステーションが備えるような高い画像処理能力とAIベースのコンピュータビジョン解析能力を必要とします。
Intel Iris Xe Graphicsエンジンは最大96の実行ユニットを搭載し、最大4K60のHDRディスプレイ4基または8KのSDRディスプレイ2基を駆動でき、正確な医療画像処理やマルチスクリーンのデジタルサイネージに対応します。デュアルビデオデコードボックスは同時に最大40本の1080p 30fpsビデオを処理できるため、管理システムやネットワークビデオレコーダーなどのアプリケーションにも最適です。
●ハードウェアを追加することなくAI推論を高速化
Intel Iris Xe Graphics実行ユニットは、深層学習の推論用コプロセッサとしても威力を発揮します。Intelはまた、Intel DeepLearning Boostと、3つのIntel高度ベクター拡張命令を1つにまとめる命令セットのVNNIを利用し、CPUでの推論も高速化させます。
IoT向けに機能強化され、最大4つのCPUコアと96のグラフィックス実行ユニットを搭載可能な第11世代Intel Coreプロセッサは、アクセラレータカードを追加することなくエッジAIを実現します。OpenVINOツールキットのIntel Distributionを使用すれば、Intel CPUとGPUアーキテクチャをフル活用できるコードを比較的簡単に作成できます。開発者はOpenVINOツールキットを使用してニューラルネットワークのモデルを最適化したり、AI推論アプリケーションを構築して、あらゆるIntelアーキテクチャに実装可能です。OpenVINOツールキットを使用すれば、VPU駆動のアクセラレータカードを備えるCPU/iGPUなど、異なるアーキテクチャが混在する環境下でも実行可能なアプリケーションをシンプルに開発できるようになります。
推論プロセスをクラウドで実行する代わりに、デバイス上で実行することで、レイテンシを劇的に下げることができます。高速でローカルなエッジAIは、列車制御システム、自己検査型製造ライン、スマート産業制御などの自律システムに不可欠です。
●リアルタイムコンピューティングに対応
製造用ロボット、通信事業者、スマート電力グリッド向けの機器等は、正確なタイミングとリアルタイムのコンピューティングが必須要件です。
従来のハードウェア設計では、時刻を同期させるために別々のマイクロコントローラや、場合によっては別々のコンピュータシステムを使用してきました。
コンガテックはIntel Time Coordinated Computing(IntelTCC)、IoT向けに機能強化された特定の第11世代Intel Coreプロセッサに搭載されたタイムセンシティブネットワーキング(TSN)3、Real-Time Systems社のハイパーバイザを使用し、複数のOSやサービスを処理しつつ、ハード・リアルタイム・コンピューティングを実行します。
●マルチコア、複数かつ同時処理により負荷分散
コンガテックとReal-Time Systems社は共同してワークロードの仮想化とコア分割の分野を切り拓いてきました。Real-TimeSystemsのハイパーバイザを使用し、各CPUコアを独立した仮想コンピューティングシステムとして実行できます。
・クアッドコアCPUを複数の仮想マシンとして使用することで、以下のように製造用小型ロボットのパフォーマンスを向上させ、演算ハードウェアのコストを削減します:
・コア1はビジョンベースのAIアプリケーションを実行し、周囲環境を認識
・コア2はハードリアルタイム制御ソフトウェア用のリアルタイムOSを実行
・コア3はLinuxとIoTゲートウェイ用の高度なセキュリティ・ファイアウォールを実行
・コア4はMicrosoft WindowsやAndroidなどの汎用OSを実行
ソフトウェアを使用して分散したワークロードを1台の演算モジュールに集約することで、システムの柔軟性が格段に高まり、新機能を活用できるだけでなく、全体的な材料費や統合コ
ストを削減できます。
●フィールドのデバイス保護機能を強化
組込みデバイスや産業制御システムは、複数の脆弱性を抱えやすく、ハードウェアやネットワークの弱点をハッカーに悪用されるリスクにさらされています。状況は、泥棒が置きっぱなしのデバイスを持ち去るのが簡単であることと類似しています。IoT向けに機能強化された第11世代Intel Coreプロセッサは、完全なメモリー暗号化(TME)、ROP攻撃防御、高度な暗号化キーによる保護など、ハードウェアベースのセキュリティ機能を多数搭載し、サイバー攻撃から仮想・物理の両面で防御します。
●COM-HPC:COM Express規格の置き換えではなく、進化
COM-HPCはCOM Express規格を代替するだけでなく、拡張します。コンガテックは第11世代Intel Coreハードウェアを使用して新たなCOM-HPC規格を開発し、新世代のCOM Express
Type6を強化しています。
https://www.congatec.com/jp/technologies/intel-tiger-lake-modules/
